新型ヤリスは乗らずに注文? 2月発売で早くも受注開始に現行ヴィッツの影響は?

新型ヤリスのおすすめグレードは?

 コンパクトカーの位置付けで捉えると、現行ヴィッツは車内の広いホンダ「フィット」とスポーティなマツダ「デミオ」の中間に位置しましたが、ヤリスはドライバー本位のクルマに発展して、デミオに近付いた印象を受けました。

 このように方向性を変えた理由を開発者に尋ねると、以下のような返答が得られました。

「初代と2代目のヴィッツは、上質なコンパクトカーといわれ、お客さまに対するインパクトも強く、ほかの車種からヴィッツに乗り替える比率も高かったです。

 ところが3代目の現行ヴィッツは、以前より個性が薄れ、従来型から乗り替えるお客さまが中心になりました。

 ほかの車種のお客さまが、あまり注目しなくなっています。そこで新型は内外装から走りまで質感を高め、車名もグローバルのヤリスに変更して、改めて注目されるクルマに造り込んでいるようです」

「ヴィッツ」から車名が変わった新型「ヤリス」
「ヴィッツ」から車名が変わった新型「ヤリス」

 現行ヴィッツは2010年に発売されましたが、2008年に発生したリーマンショックによる経済不況の悪影響を強く受けています。

 内装、乗り心地、静粛性などが悪化して、ネッツ店の営業担当者が「こんなクルマでは、2代目ヴィッツのお客さまに乗り替えを提案できません」と悩むほどでした。

 この後に不満をかなり解消しましたが、マイナーチェンジで可能な範囲は限られます。そこでヤリスでは、上質だった2代目の路線に戻したのです。

 後席は2代目に比べて狭くなりましたが、今後はヤリスと同じエンジンやプラットフォームを使って、空間効率を高めたコンパクトカーも登場するのでしょう。

 開発者も「新しいプラットフォームを開発した以上、ヤリス専用で終わることは考えにくいです」と述べています。

 初代ヴィッツをベースに開発された上質で車内の広い「ファンカーゴ」のようなコンパクトカーが期待されます。

 また、ヤリスの装備類における違いでは、1リッターに比べて1.5リッターは14万3000円高く、ハイブリッドはさらに35万円ほど高くなります。

 1.5リッターが割高に思えますが、最大トルクが1リッターの1.6倍に増えて動力性能に余裕が生まれ、直噴式の採用と相まって燃費数値も1リッターに比べて優れています(1.5リッター・2WD・CVTのWLTCモード燃費は21.4km/Lから21.6km/L)。もっとも推奨度の高いエンジンは1.5リッターです。

 1.5リッターは燃費も良いため、35万円高いハイブリッドとの価格差を燃料代の差額で取り戻すのは難しくなり、1年間の走行距離が1.5万km以上を走るなら、ハイブリッドも検討する価値もあるでしょう。

 グレードにおいて、実用的には1.5リッターの「Xグレード(価格は159万8000円)」でも十分ですが、装備が少し物足りないです。

 予算に余裕があれば1.5リッターの「Gグレード(175万6000円)」を推奨します。Xに比べてスマートエントリー&スタート、エアコンのオート機能、8インチサイズのディスプレイオーディオ(Xは7インチ)などが標準装着され、フルLEDヘッドランプのオプション装着も可能です。

 全長4m以下のコンパクトカーが170万円を超えるのは、割高に思えますが、衝突被害軽減ブレーキなどは進化しました。

 右折時における直進車両、横断歩道を渡る歩行者も検知して衝突被害軽減ブレーキを作動させます。全車速追従型ではありませんが、約30km/h以上で作動可能な車間距離を自動制御できるレーダークルーズコントロールを採用し、価格に見合う価値を備えています。

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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