トヨタとマツダの違いはどこに? 豊富なSUVラインナップに見る販売戦略とは

大メーカーにはできない、マツダだからできるクルマ作りとは

 一方、マツダだからできたという点もあります。今回のCX-30を見てみると、2018年に大幅な改良を終えたばかりのCX-3と比べても、現在進行形のトレンドやニーズがすでに反映されていることが理解できます。

 たとえば、CX-30はブラックアウトのパネル面積をCX-3よりも広くし、SUVとしてのマッシブな雰囲気を強めています。さらに最新式の4WDシステム「i-ACTIV AWD」には、これも最新システムである「オフロード・トラクション・アシスト」という電子デバイスを付加。従来よりも高い悪路走破性を身に付けました。

 オフロードやヘビーデューティを指向する商品性は、ごく最近のSUVのトレンドであり、それはRAV4の好調さを見ても理解できると思います。

 では、なぜ大改良したCX-3ではクルマに反映されていないのに、1年半後に発表されたCX-30ではしっかりと押さえられているのでしょうか。担当開発者は、次のように話します。

「要因は開発期間の短さにあると思います。基本的な技術、たえばエンジンやシャシ、サスペンション、電子制御技術というのは、常に進化の努力を続けているのですが、クルマ造りに大切なのはそのときのニーズの反映という部分があります。

 一般的にクルマの開発期間は4年から5年ほどといわれていますが、市場の変化が早い場合、この開発期間でかなり先までのトレンドやニーズに対応するのは難しいです。

 CX-30は、『マツダ3』と同時に開発し、技術共有できる部分は共有し、開発期間を約2年と短縮させました。その結果、昨今のニーズをいち早く商品に反映させることができたと思っています。こうした小回りの利いた開発こそが、我々のようなスモールメーカーの強みなのではないでしょうか」

3種類の4WDシステムを採用した新型「RAV4(アドベンチャー仕様)」
3種類の4WDシステムを採用した新型「RAV4(アドベンチャー仕様)」

 CX-30が投入されたコンパクトクロスオーバーの市場は、C-HRのほかにスバル「XV」、ホンダ「ヴェゼル」、さらにはBMW「X1」や「MINIクロスオーバー」など強豪がひしめく激戦地帯です。そんななかでも、CX-3の弱点を解消してきたCX-30は、強い商品力を持っているといえます。ブランドで統一したデザインには、買っても間違いがないという安定感を感じます。

 マツダの関係者はあくまでも「未定」としながらも、今後のマツダSUVの展望を次のように語りました。

「CX-30では、昨今トレンドのアウトドア指向やユーザーのニーズをスピーディに取り入れることができたと思っています。こうしたことは、SUVのラインナップ全体にもいえることで、今後現状のモデルの機能をさらに充実させるような新モデルを開発していくことも十分にあり得ます。

 まず目の前にあるニーズを着実かつスピーディにクルマに反映させていくことが、マツダらしさに繋がっていき、ユーザーに『マツダを買って良かった』と思っていただけるようになるのではと考えています」

 現在、北米や中国市場で苦戦しているマツダですが、欧州調の上品なデザインを纏ったマツダ車が、かの国のユーザーの嗜好とは少し異なっているのは、クルマ好きであればすぐ気づきます。

 一方で、他社の製品とは明らかに違うクオリティや乗り味、使い勝手を評価しているクルマ好きが多いのも事実です。
 たとえば、日本の若年層に人気の高いCX-8では、「ミニバンには乗りたくない、でもお金はあまりない」という若いファミリーに、3列シートで、しかもクオリティの高いCX-8は支持されています。CX-8は他社ではなかなか出さないモデルといえ、まさにマツダらしさが顕著に出たSUVです。

 両メーカーのSUVにはもちろん、それぞれの魅力がありますが、昨今のマツダ車には驚かされるものが多いです。SUVを得意とする国産メーカーとして、地位を向上しつつあるマツダが送り出した自信作、CX-30がユーザーにどのような評価を受けるのか楽しみでなりません。

 ちなみにトヨタは、2020年の春を目処に、販売体制を大幅に変える予定になっています。これまでのトヨタは、4つある販売チャネルでどの車種もすべてのディーラーで買えるように変更するとともに、ラインナップを現在よりも大幅に絞ったラインナップにしていく予定です。

 SUVだけでいえば、消滅しそうな車種は現在のところ見当たりませんが、なんとなくこの動きは、マツダの販売体制に似ているといえます。

 しかし、トヨタは2020年に新型モデルとなるランドクルーザーを発表するという大きなトピックスがあるかもしれないので、それにも期待したいところです。

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Writer: 山崎友貴

自動車雑誌編集長を経て、フリーの編集者に転向。登山やクライミングなどアウトドアが専らの趣味で、アウトドア雑誌「フィールダー(笠倉出版社刊)」にて現在も連載中。昨今は車中泊にもハマっており、SUVとアウトドアの楽しさを広く伝えている。

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