トヨタとマツダの違いはどこに? 豊富なSUVラインナップに見る販売戦略とは

世界中の自動車メーカーは、ここ最近続いている「SUVブーム」の影響もあって、続々と多種多様なSUVラインナップを増やしています。そんななか、後発として登場したのがトヨタ「RAV4」とマツダ「CX-30」です。両社にはすでに豊富なSUVラインナップがあるにも関わらず、なぜ新たにSUVモデルを追加したのでしょうか。

トヨタとマツダのSUVラインナップに見る、違いとは?

 最近の自動車業界は、「SUVブーム」が続いています。国内自動車メーカーがこぞって多種多様なSUVモデルを続々とラインナップしているからです。

 国内自動車メーカーのSUVラインナップは、2019年9月時点の多い順で並べるとトヨタが6車種(ハイラックスを含む)、マツダは4車種、スズキは4車種(クロスビー/ハスラーを除く)、スバルが3車種、三菱は3車種、ホンダが2車種、日産は2車種となります。

 これらのSUVモデルのなかで、比較的に後発で登場したのがトヨタ「RAV4」とマツダ「CX-30」です。この2社はすでに、ユーザーのニーズに合わせたSUVを用意しているにも関わらず、なぜ新たにSUVモデルを追加したのでしょうか。

トヨタの新型「RAV4」とマツダの新型「CX-30」は、どちらもオフロード性能を重視している
トヨタの新型「RAV4」とマツダの新型「CX-30」は、どちらもオフロード性能を重視している

 マツダの新世代クロスオーバー「CX-30」は、2019年9月20日に発表されましたが、その商品力はさらに磨きがかかっていました。そこにはマツダだからこそできるクルマ造りと、大メーカーとは異なる販売戦略が垣間見えていました。

 マツダは、「CX-3」、「CX-5」、「CX-8」、そして中国メインの「CX-4」と北米メインの「CX-9」という従来のラインナップにCX-30を加えて、世界のSUV市場で勝負することになります。ちなみにCX-30は、CX-3とCX-5の間を補完するモデルであり、都市部で扱いやすいサイズと、CX-3以上の居住性・積載性を実現したモデルです。

 少し見ただけは違いが分かりにくいCX-3とCX-30。ですが、実車を見てみると、なぜマツダが似たような車名のCX-30を出したのかがよくわかりました。

 かつてマツダは、フォードグループを離れるときに、「2%の人に好かれるクルマ」という戦略を打ち出しています。スモールメーカーであるマツダが、トヨタなどの大メーカーのような「誰にでも好かれるクルマ」を造るのは難しく、また市場で対抗するのは難しいと考えたからです。

 たとえば、トヨタとマツダのSUVラインナップを比較すると、両メーカーの戦略の違いが理解できます。トヨタは現在、RAV4と「C-HR」が好調で、両車は外観の雰囲気も異なっていれば、サイズ感や使い勝手もまるで異なっており、違うニーズを持ったユーザーを、異なるキャラクターのクルマで獲得しているのです。

 トヨタはこの2モデルだけでなく、元祖プレミアムSUVともいえる「ハリアー」、オフロード4WDの頂点にいる「ランドクルーザー」、さらにSUTの「ハイラックス」といった強力な布陣でシェアを獲得しています。たとえるなら、和食、洋食、中華、ファストフードのすべての店を揃えた、フードコートのような感じでしょうか。

 一方のマツダといえば、小さいけれど、満足度の高いレストランという感じです。まず、欧州の自動車メーカーのように、基本的なデザインを全車種統一し、セダンを見ても、SUVを見ても、ひと目でマツダ車であると分かるクルマ造りをおこなっています。

 新型クロスオーバーSUVのCX-30について、担当開発者は次のように話します。

「たとえば、CX-30というのは、ユーザーのライフスタイル、ライフサイズに対しての提案であって、私どもとしては『マツダというブランドを買っていただく』という考え方でおります」

※ ※ ※

 モデルひとつひとつに明確なキャラクターを持たせて、それを細分化しているユーザーの嗜好に向けて売っていくトヨタ方式とは、まるで反対のベクトルをマツダは戦略として取っています。

 カテゴリーやセグメントを分けしつつも、あくまでも全車でデザイン、イメージ、そしてクオリティ感を統一。かつて「マツダスパイラル(マツダ地獄)」と呼ばれた頃とは別次元のクルマであり、中古車市場でも十分な価値を維持して流通できるようなりました。

 車名もメルセデス・ベンツやBMWのような数字とアルファベット式を模して、直感的にそのクルマがどんなクルマかが分かるようになっています。しかし、国内市場の関係者からは、次のような話も出ているようです。

「たとえば、RAV4やC-HR、ランドクルーザーといえば、ある程度クルマを知っている人であれば、どんなカタチのクルマなのか、明確にユーザーさんの頭のなかに浮かぶと思いますが、CX-30といわれてディティールまで思い浮かべることができるユーザーさんは、そのクルマの購入を検討している人くらいです。

 ラインナップをあまり理解していない人にとって、マツダのクルマは大きさの差しか思い浮かびません。ブランドイメージを統一して造っているために、いいクルマだけど個性がない、思っている人も少なくないと思います」(国産メーカー系ディーラー営業担当)

 ただし、こうした戦略が難しいのは理解していると、マツダの関係者は語ります。

「実際、マツダのモデル名や、その違いが分かりづらいという市場の声があるのは理解しています。でも弊社では、数年前から『マツダだから買いたい』と思っていただくための取り組みを続けており、認知されるまで時間がかかっても、必ずや定着するものと思って努力をしているところです」

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