背が高いほうが売れる!? アルヴェル人気の陰でエルグランドとオデッセイが伸び悩む理由

立派なクルマに乗りたいというアルヴェルユーザーの心理

 オデッセイは、「必要な室内高、最低地上高、床面形状が確保されれば、クルマの床は低いほど良い」というクルマ造りの合理的な考え方に基づき、低床設計を実現しました。そのために走行安定性は、アルヴェルよりも格段に優れています。

低床で乗り降りしやすいホンダ「オデッセイ」
低床で乗り降りしやすいホンダ「オデッセイ」

 また床が低いため、3列目シートに座っても、床と座面の間隔が十分に確保されているのが特徴です。アルヴェルの3列目は、床と座面の間隔が不足気味で足を前側に投げ出す座り方になりやすいですが、オデッセイは3列目も快適。

 オデッセイは、多人数乗車時の居住性が最も優れたミニバンといえますが、オデッセイの売れ行きはアルヴェルの13%です。

 アルヴェルは、クルマの機能よりも「周囲を見渡せる立派なミニバンに乗りたい」という顧客の希望を満足させて、好調な売れ行きを達成しました。

 最近はメーカーの考え方を色濃く反映したクルマが減っていますが、アルヴェルとオデッセイには、トヨタとホンダの特徴が明確に表現されています。

 トヨタは顧客の目線で、好調に売れる商品を開発するのが得意で、ホンダは顧客に対して新しいクルマのあり方を提案する傾向が強いため、オデッセイの価値観も新鮮です。

 これは両社の考え方の違いであるため、アルヴェルは好調に売れていますが、それによってオデッセイの価値が下がることはありません。オデッセイにはアルヴェルでは得られないメリットがあるからです。

 そういう意味では、エルグランドは中途半端です。全高は1815mmとアルヴェルに比べて120mm低いですが、オデッセイのような低床設計ではないので、室内高も1300mmにとどまってアルヴェルより100mm下まわります。

 初代エルグランドの全高は1940mmから1955mm、2代目のエルグランドの全高は1910mmだったので、現行アルファードと同等でした。しかし、2010年に3代目にモデルチェンジした際に、全高が1815mmと10mm近く低くなったため、車内が窮屈になり外観の存在感も乏しくなりました。

 現行エルグランドは、床が高く天井は低いため、3列目は床と座面の間隔が大幅に不足しています。膝が持ち上がって腰は落ち込み、ミドルサイズミニバンの日産「セレナ」の3列目よりも窮屈になりました。

 荷室の床も高く、3列目を前側に倒して畳むため、荷室高が不足してセレナよりも自転車などを積みにくいです。これでは背の高いミニバンのメリットが得られません。

 オデッセイは、外観の見栄えがアルヴェルに劣っても、機能では勝負できますが、エルグランドは機能でも負けてしまいます。

 またエルグランドは、アルヴェルやオデッセイと違って、ハイブリッドをラインナップしていないのも痛手です。

 販売体制の違いも、アルヴェル人気に拍車をかけています。アルファードを扱うトヨペット店は、もともと法人営業が強く、社用車として使うニーズもあります。トヨペット店の販売スタッフは「政治家や企業のトップがアルファードを使っている様子が報道され、法人のお客様の人気をさらに高めました」といいます。

 法人ユーザーの多いアルファードは、以前はフロントマスクがヴェルファイアに比べて大人しい印象でした。現行アルファードは派手なデザインに変更して、売れ行きを伸ばしています。

 アルファードを扱うトヨペット店が1000店舗、ヴェルファイアのネッツトヨタ店は1600店舗で、店舗数が少なくても、いまはアルファードの方が売れています。

 このほかトヨタにはクラウンやマークXといった上級セダンが多く、そこから乗り替えるユーザーが増えたことも、とくにアルファードが売れ行きを伸ばした要因といえます。

 なお、トヨタのミドルサイズミニバン「ヴォクシー」「ノア」「エスクァイア」は、アルヴェルとは違って低床設計です。

 全高を1825mmに抑えながら、室内高はアルヴェルと同じ1400mmを確保。乗降性が優れ、空間効率が高いために、ボディはミドルサイズでも3列目シートは意外と快適です。

 ラグジュアリー指向のアルヴェルと実用重視のヴォクシー、ノア、エスクァイアとで、クルマ造りの手法を大きく変えているところもトヨタの商売上手なところでしょう。

 アルヴェルの人気はこれからも続くでしょう。外観は豪華で立派ですから、それに相応しい優しい運転を心がけてほしいと思います。

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Writer: 渡辺陽一郎

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。

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2件のコメント

  1. この記事の記者はトヨタしか取材しないのか?
    以前にカレスト座間でエルグランドをミニコースで試乗した程度だがCVTの出来の悪さ以外はトヨタのような商用車から抜け出せないような乗り味とは違う感覚を覚えたもんだがね
    それにしてもモデル末期を吊し上げて中途半端は失礼だろ

  2. DQNと煙は高くなっていく法則を突いたトヨタは賢い

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