実は大きなリスクも? 新車が安く買える「残価設定ローン」の落とし穴とは
事故などのトラブル時は大きなリスクも
まずボディのキズ、走行距離が一定の範囲を超えると精算の対象になります。走行距離は1か月当たり1000km(1年に1万2000km)を条件にすることが多く、走行距離が超過すると、1km当たり5~8円の精算金を請求されます。
仮に1年に1万5000kmを走り、1km当たりの超過料金が8円とすれば、1年当たり2万4000円です。3年間なら7万2000円になります。
キズも通常の使用の範囲を超えると精算の対象になるため、クルマを借りている感覚で使うことが大切です。リースに近いローンといえるでしょう。
販売店のセールスマンに尋ねると、別の注意点も教えてくれました。
「個人的には残価設定ローンを推奨しません。理由は信号待ちをしていて大きな追突事故の被害にあった時など、事故歴に記録されると、自分の過失がなくても車両の返却時に多額の精算が生じるからです。加害者に残価設定ローンの精算金まで請求できれば良いですが、それはほぼ無理です」
任意保険の車両保険「車両新価特約」に加入すると、修理費用が新車価格相当額の50%以上であれば、新車購入費用に相当する金額が補償されます。しかし修理費用が新車価格の50%以下の場合は、修理で済まされます。
これが軽微な損傷に収まらなければ、事故歴とされて精算の対象になるのです。車両新価特約には有効期間もあり、保険会社によっては3年間なので、残価設定ローンが5年コースの場合では不足が生じてしまいます。
残価設定ローンは、月々の返済額が少ない代わりに、常に多額の債務(借金)を負担しています。事故などのトラブルが生じた時のリスクが大きな保険であることを把握しておきましょう。
そして利用されるのであれば、なるべく数年後の残価が高い車種を選ぶのがコツです。残価が高ければ、前述のように月々の返済額を抑えられるためです。同じ車種でも、グレードやボディカラーによって残価率は異なります。また販売会社によっても、残価率や金利に差が生じる場合があります。
いい換えれば残価設定ローンが普及すると、残価率の低い不人気車、個性的なボディカラーは、ますます売れ行きが下がります。クルマの販売格差を拡大するローンともいえるでしょう。
【了】
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。