ホンダもミラーレス導入! ほのぼの顔の新型「ホンダe」が目指したものとは

電気自動車の新型モデル「ホンダe」がジュネーブモーターショー2019で初公開されました。欧州では2019年夏より発売される予定ですが、どのようなコンセプトで開発されたのでしょうか?

どれだけ走れるかよりもどんな風に走りたいかを重視

 2021年度中にイギリス工場での生産終了を発表したホンダですが、欧州でのビジネスから撤退するわけではありません。その切り札となる存在が、ジュネーブモーターショー2019で世界初公開された新型電気自動車「ホンダe プロトタイプ」です。

電気自動車の新型モデル「ホンダe」

 ホンダの電動化を象徴するモデルと言うと、1つのプラットフォームに3つのパワートレイン(燃料電池、プラグインハイブリッド、EV)が搭載可能な「クラリティ」がありますが、「ホンダe」はどのような目的で開発されたのでしょうか? LPL(ラージプロジェクトリーダー)の人見康平さんに聞いてみました。

――新型「ホンダe」はどんなクルマを目指したのですか?

「数年前から欧州の色々な地域を回って思ったのは、電動化は絶対に必要なのですが、街に馴染むということも重要だと感じました。世の中的には、“電動化”→“航続距離が必要”→“バッテリーをたくさん搭載”→“ボディサイズは大きくなる”というのが一般的ですが、街中は小さいクルマしか走れません。

 コンパクトなサイズで何が提供できるか? 弊社には様々なパワートレインがあり、フォーメンションで戦う事ができるので、『これが正しい』ではなく、『その人にとっていい物なのか?』にこだわって開発をしました」(人見氏)

――今回発表された「ホンダe」の詳細は、「フィット」より10cm短いコンパクトな全長による取り回しの良さとサイズを感じせないパッケージング、力強いモーター(恐らくクラリティと同じ?)と、後輪駆動による走りの楽しさや航続距離200km以上(WLTPモード)などですが、やはり気になるのはどれだけの距離を走れるかということです。

 先日発売された日産「リーフe+」は、標準仕様の「リーフ」よりも大容量の62kWhの高性能リチウムイオンバッテリーを搭載して570km(JC08モード)の航続距離を実現していますが、それにと比べると「ホンダe」に物足りなさを感じる人もいるかもしれません。この点についてはいかがお考えでしょうか?

「確かに航続距離は短いかもしれませんが、シティコミューターとして使い毎日充電する人にとってはどうでしょうか? 電池に合わせて車体を作る、電池に合わせて車両を計画する、それは本当にユーザーのためなのでしょうか? という一つの答えが『ホンダe』なのです」(人見氏)

――つまり「ホンダe」はこれまでの延長線上にあるモデルとは違い、新しい提案をするためのモデルと言う考え方ということですね。

「航続距離はユーザーが何を求めるかによって変わってきますし、電池の進化も日進月歩です。現状で物事を解決するのではなく、長い目で見て行こうと。私は2代目『フィット』や『N-WGN』を担当した後に機種担当を離れましたが、俯瞰でモノを見たことで、色々な事が解りました。その一つが『割り切って進めることも大事』ということでした。何かを失って何かを得る、そこで個性を出すことも重要な事だと思っています」(人見氏)

初代「シビック」を彷彿させながら、最新の技術も数多く搭載

――ちなみにモーターはリアに搭載し後輪を駆動しますが、その理由は何でしょうか?

「バッテリーのサイズや汎用性を考えるとホイールベースが決まります。タイヤは前後異径の17インチを履くので切れ角も気になる。モータートルクも大きいのでトラクション性能の事を考えると後輪駆動がベストという考え方です。重心も低くスポーツカーに近いディメンジョンなので、『フィット』とは違う世界観を提供できると確信しています」(人見氏)

ほっとする雰囲気の「ホンダe」の内装

――デザインもここ最近のホンダのプロダクト味濃いめでのスポーティなイメージとは真逆で、薄味ながらも初代「シビック」を思い出すような、ほのぼのしながらも質の高いスタイルが採用されていますね。

「ボクシーなスタイルでタイヤも太いので空力はそれほどよくありませんが、これも航続距離を割り切ったことで実現できた事の一つです。200kmで区切ることでメリットを活かした形なのです。シンプルなデザインを実現するために、サッシュレスドア、デジタルアウターミラーなど難しい技術をたくさん使っています。インテリアも2面のディスプレイが特長の一つですが、スマホのほうにソフトが充実していくと色々な事ができるような仕掛けもしています。それ以外にも普通ではあり得ない事を数多く盛り込んでいます」(人見氏)

※ ※ ※

 今回発表されたのはプロトタイプではあるものの、ホンダ自身は「95%は市販モデルと同じ」と語っています。聞く所によると、特殊なボディカラーや車高、ツライチのホイールインセットなど若干異なる程度だそうです。

 筆者(山本シンヤ)は「人のためにスペースは最大に、メカニズムは最小に」というホンダの『M・M思想』がより色濃く反映したモデルだと感じました。

「ホンダe」は、欧州では2019年の夏より開始されますが、日本への導入は2020年頃とまだ先になるようです。しかし、早くステアリングを握ってみたい一台だと思いました。

【了】

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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