平成とともに育ったトヨタ高級ブランド「レクサス」 全世界販売1000万台にまで成長した理由
「IS F」や「LFA」以降はスポーティなイメージも
しかし、レクサスはそんな課題に真摯に向き合い、ハード面ではデザインの刷新やバリエーション拡大(クロスオーバーSUVやコンパクトモデルの導入)、そしてハードの進化などを行なってきました。
また、2007年の「IS F」を皮切りにスポーツブランド「F」の展開もスタート。更に2009年にトヨタのF1参戦記念モデルが起源となったV10エンジンとカーボンモノコックを採用のスーパースポーツ「LFA」を発表し、世界限定500台で発売も行なわれました。
実はこれまで「LFA」を除くモデルは、基本的にはトヨタ車の基本コンポーネントを流量して開発されていましたが、2012年に登場した「GS」からレクサス専用のプラットフォームを採用。また、デザインも現在につながる「スピンドルグリル」の採用も行なわれた結果、認知度やブランドイメージも高まり、それに比例して販売台数も伸びていきました。
”レクサスはいいクルマだけどつまらない”から脱却
その一方で「レクサスはいいクルマだけどつまらない」と言う声がありました。そんな殻から抜け出すために開発されたのが2012年デトロイトショーでお披露目されたコンセプトカー「LF-LC」でした。
元々は単なるコンセプトだったのですが、世界各国で高い評価を受けたことから市販化を決意。さまざまな技術的な課題をブレイクスルーしながら開発が行なわれ2016年に発売開始したのがラグジュアリークーペの「LC」です。
ちなみに「LC」の開発の中で生まれた技術の中には、トヨタのクルマ造りの航続改革「TNGA」に基づいて開発されたGA-Lプラットフォームやマルチステージハイブリッドなどがあります。これらの技術は2017年に登場した5代目「LS」にも水平展開されています。
また、2018年には、これまで海外専売だった「ES」の日本初導入やクロスオーバーSUVシリーズの末っ子となる「UX」も登場。こちらもTNGAに基づいたプラットフォーム/パワートレインを採用しています。
なお、「ES」は「カムリ」がベース、「UX」は「C-HR」がベースと言われますが、基本骨格は共通ながら構成部品の多くはレクサス専用に設計されている事はあまり知られていません。
グローバルで1000万台の販売を達成
このようなさまざまな努力も相まって、2018年3月時点で累計販売台数50万台を達成し、同年1~6月の日本での販売は前年比150%の約3.3万台を記録。1989年のブランド創設以来、グローバルで1000万台の販売を実現したのです。
ただ、レクサスは決して“販売台数”を追わないこともアナウンスしています。来年2020年はレクサスが国内導入をスタートして15年と言う節目の年となります。
もちろん、ジャーマン3をはじめとした世界のプレミアムブランドのライバルと比べると課題はありますが、単なるカーブランドではなく「驚き」と「感動」を提供するラグジュアリーライフスタイルブランドとしての挑戦は今後もまだまだ続きます。
【了】
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。