第二の「SUVブーム」になる? トヨタ「ハイラックス」の人気が急激に高まっている理由
各所がピックアップトラックに期待する理由とは
国内の自動車業界が「ハイラックス」に懐疑的だったのは、そのボディサイズです。5mを優に超える全長は、日本では大きすぎると危惧されたからです。
前述の担当者は「群馬の道路事情もあるかもしれませんが、実際に運転されたお客様の多くが“思っていたほど大きくなく運転しやすい”とおっしゃいます」といいます。
愛知県内で、ハイラックスのキャノピーなど専用パーツや並行輸入ピックアップトラックを販売しているアクセルオートコーポレーションの営業担当者も同様に説明しています。
「名古屋の都市部でもハイラックスユーザーは多く、その大きさはまったく気にならないと言っていますね。見た目は非常に大きく見えますが、実際に運転すると大型SUVよりも小回りが利きます。乗り心地も商用車然としておらず、想像以上にスポーティなのも好評なんじゃないでしょうか」
トヨタ「ハイラックス」は、発売開始の2017年9月から2018年12月までで、約7700台を販売。月によっては600台の受注があった時もあるのです。年間販売目標が2000台に設定されていたことを考えると、日本で大成功を収めたといえます。
『ピックアップトラックは実は売りやすい』と前述のアクセルオートコーポレーションの営業担当者は語ります。
「ラゲッジルームが丸見えのピックアップトラックは、具体的なレジャー用品などを載せて展示することで、ユーザーに購入後のライフスタイルを想起させやすいです。
SUVは多用途でも、なかなかそれを見せにくい。最近のクルマのユーザーは、分かりやすい多用途性という性能がマストですから。その上ピックアップトラックは、人とは違うクルマに乗っているということをアピールしやすいのだと思います」
東京オートサロンや大阪オートメッセでは、ほとんどのタイヤメーカー各社のブースでピックアップトラックが展示されていたことが印象的です。
タイヤメーカーにとって、メインの市場は北米。そのためピックアップトラック用の既存モデルも多く、今後日本でのシェアの確保が期待されます。
多くのハイラックス展示車があったなかで、多くの注目を集めていたトーヨータイヤの広報担当者は次のように説明します。
「売れているとはいえ、まだ1万台レベルですから、タイヤの販売数で考えれば小さい市場です。でも、今後ハイラックスの好調をきっかけに、逆輸入モデルなどの需要が伸びれば市場も拡大しますので、期待しています」
実際、トヨタ「タンドラ」や「タコマ」の並行輸入車は、日本で好調な売れ行きです。長い間、絶滅危惧種といわれたピックアップトラックですが、前回のブームから四半世紀の時を経た今、再燃しそうな気配となっています。
【了】
Writer: 山崎友貴
自動車雑誌編集長を経て、フリーの編集者に転向。登山やクライミングなどアウトドアが専らの趣味で、アウトドア雑誌「フィールダー(笠倉出版社刊)」にて現在も連載中。昨今は車中泊にもハマっており、SUVとアウトドアの楽しさを広く伝えている。