世界中でSUVブーム継続中 ボルボ「V60」の登場でステーションワゴン時代再来なるか?
ロングドライブに欠かせないシートの大切さ
サスペンションは、どちらかという硬めです。「V60」はリアサスペンションにインテグラルというマルチリンク式を使っています。実際の構造を見ると、荷物の積載を考慮していかに耐荷重性の高そうな造りになっており、シャシーの剛性感も十分でしたが、リアサスの剛性の高さも、カッチリとした走りに出ていました。
3タイプの減衰力に変えることが可能でしたが、3人乗車で撮影機材などをある程度載せた状態で、もっと硬くなる「ハイパフォーマンス・モード」が快適だという結論に至りました。
ただし、後で分かったことですが、装着していたタイヤのバランスのせいでジャダーが発生していたため、高速道路のつなぎ目を考えれば「コンフォート・モード」でも良かったのかもしれません。
車内の居住空間は、「XC60」よりも当然ながら狭いのですが、乗っていて圧迫感を感じることはほとんどありません。後部座席のヘッドルームも先代よりも大幅に拡大したため、シートのリクライニング機構を除けば、満足できる快適性だといえます。
新型「V60」のロングドライブを快適にしてくれたのは、シートによる部分も大きいと思います。このシートは腰痛持ち、かつ大柄の筆者(山崎友貴)でも腰の位置がいい感じで定まり、下車する度に背中を伸ばすようなことがありません。
ボルボは、このシートのセッティングを重要視しており、ホールド感の確保と疲労感や痛みの軽減に両立に注力したといいます。座ると分かりますが、まさに硬すぎず柔らかすぎずのクッションは、寝る時にも使いたいくらいです。
また、ボルボで忘れてならないのが、「アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)」や「パイロットアシスト」といった安全装備です。
とくに、ACCは長距離のドライブでは絶大な恩恵をドライバーに与え、巡航速度を設定すればカメラとレーダーが他車を感知して、加速減速を自動的に行います。
昨今は、国内外のクルマに同様の装置が採用されていますが、ボルボのACCは加減速のタイミングが実に絶妙で、不安やストレスを感じることがありませんでした。
乗り心地をユーザーに問えば、おそらくサスペンションのトラベル量が大きい「XC60」や「XC40」に軍配が上げると思いますが、ハンドリングで考えれば、やはり「V60」は低重心で安定感があります。
価格は、「XC60 T5 AWDモーメンタム」よりも100万円も安く、それでいて装備内容は上です。居住性や実用性は、ほぼ同等で、『SUVほどのロードクリアランスはいらないし、FFでいい』というユーザーは、実は積極的に「V60」というエステートモデルを選んでもいいのではないでしょうか。
わずか丸1日の試乗でしたが、原点回帰したスタイリングや走りの良さなどの部分で、かなり「V60」がお気に入りになりました。もしかすると、ボルボのエステートが再びブレイクする日も、さほど遠くないかもしれません。
【了】
Writer: 山崎友貴
自動車雑誌編集長を経て、フリーの編集者に転向。登山やクライミングなどアウトドアが専らの趣味で、アウトドア雑誌「フィールダー(笠倉出版社刊)」にて現在も連載中。昨今は車中泊にもハマっており、SUVとアウトドアの楽しさを広く伝えている。