現代のCBに往年の記憶が蘇る レーシングドライバーがライダーになった日

爽快な加速フィールや取り回しの良さに昔の感覚が蘇る

 124ccとは思えないのは、加速感にもありました。124ccでかつ13PSとは思えない鋭い加速フィールであることに驚かされました。ピンクナンバーですから、高速道路に乗り入れることは法規的に禁止されています。そのことが不自然に思えるほどに、走りは十分にパワフルなのです。そろそろ法規制を緩めてもいいかもしれませんね。「CB125R」を走らせると、本当にそう提案したくなるほどです。

ライディングを楽しめるCB125R

 取り回しも、軽快です。前輪に荷重を載せている感覚が強いので、旋回性がシャープに感じられます。ある意味でヒラヒラと蝶のように舞いながら、ある意味では、バイロンを次々にクリアしていくのが楽しそうな、そんなクイックな印象が強いのも特徴でした。

 たとえばUターンする時に、一気に反動を使って倒し込み、タイミングよくスロットルを開けて復元させるような、そんな刺激的な走り方にトライしたくなります。重量級ではなかなかトライしづらいアクションですが、そもそも軽量なので、リスクを最小限に抑えたままで、そんなアクロバチックな操縦に挑めそうなのです。

 ライディングは爽快です。どこかに目的地を持って移動するツールではなく、ライディングそのものを楽しむためのバイクかもしれません。久しぶりに「ライダー」になった気持ちがしました。

暖かい缶コーヒーはライダーのための飲み物では?

 試乗のその日は、寒気に包まれていました。ですから肌寒かったのも事実です。暖を取ろうとエンジンに手をかざしても、カバーで覆われていたためにそれは叶いませんでした。しかたなく、パーキングに到着して缶コーヒーで両手を温めたほどです。そういえば、自動販売機でホットの缶コーヒーを買ったのは何年振りでしょうか。あの甘くホットな缶コーヒーを口にすることは、クルマ乗りではあまり経験が少ないものです。

「ホットの缶コーヒーは、ライダーのための飲み物だったのではないだろうか」

 そんな不思議な感覚になったほどです。

左:CB125R(木下隆之)右:VFR(青木タカオ)

 CB125Rは僕を、久しぶりにライダーにしてくれたようです。

「CB125R」の価格(税込)は、44万8200円です。

【了】

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Writer: 木下隆之

1960年5月5日生まれ。明治学院大学卒業後、出版社編集部勤務し独立。プロレーシングドライバーとして全日本選手権レースで優勝するなど国内外のトップカテゴリーで活躍。スーパー耐久レースでは5度のチャンピオン獲得。最多勝記録更新中。ニュルブルクリンク24時間レースでも優勝。自動車評論家としても活動。日本カーオブザイヤー選考委員。日本ボートオブザイヤー選考委員。

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