「納期がかかる」は人気車の証? 新型車がユーザーを待たせる理由とは
納期が延びるもう一つの理由
納期が延びる2つ目の理由として、発売と発表、あるいは予約受注の時間的なズレもあります。たとえば三菱デリカD:5は大幅なマイナーチェンジを予定しており、販売店では、2018年11月21日に価格も明らかにして予約受注を開始しました。すでにメーカーへ注文を入れられます。
それなのに11月下旬において、三菱の販売店では、生産や納車を伴う正確な発売日を把握していません。
販売店では「発売日は2019年2月下旬頃になりそうです。受注はすでに(11月21日から)開始しているので、2018年11月下旬の契約になると、納車は3月以降でしょう。試乗車が販売店に配車されるのは2019年2月下旬以降ですから、試乗した後で契約すると、納期はさらに遅れます」と説明します。
三菱に限らず、今は予約受注を発売前に開始するのが当たり前になりました。車種によっては、予約受注の開始が4月、価格を含めた正式な報道発表が7月、生産と納車を伴う発売が9月といった具合に、複数の段階を踏む車種もあります。これではいつデビューしたのか消費者にはわかりません。いたずらに待たされる印象があり、少しでも早く納車するには、リスクを覚悟した上で実車を見ないで早々に契約する必要があります。
こうなる理由を複数メーカーの商品企画担当者に尋ねると、こちらもほぼ共通した返事が聞かれます。
「今は海外に輸出するモデルも含めると、車種数が増えました。パワートレーンも、ハイブリッドを含めて幅広いです。その一方で国内の売れ行きは全般的に下がりました。多品種少量生産に近づいています。そうなると生産開始よりも前の段階で、グレードやオプション装備などの正確な需要を把握しておきたいわけです。そこで受注の開始を前倒ししています」
メーカーの事情はわかりますが、いい換えれば、今はユーザーニーズや市場動向を正確に把握できないことになります。国内のユーザーを大切に考えて、消費動向を見据えれば、今後発売する新型車の人気や売れ筋のグレードなども分かってくるでしょう。
要は日本のユーザーと市場に対する自動車メーカーの本気度の低下が、ユーザーを待たせるクルマを生み出しているのです。
【了】
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。