観音開きのサイドドアはなぜ廃れた? あのクルマで伝統のオールドスタイルは別名「自殺ドア」!?
サイドドアが後方から開くのではなく、前方から開くタイプがあります。前席側と後席側のドアで観音開きになるクルマも。かつてはいまよりも多かったこのタイプ、なぜ廃れてしまったのでしょうか。
初代「クラウン」は「自殺ドア」だった!?
いまのクルマは前席、後席とも、サイドドアはヒンジ(蝶番)が前方に設けられ、後方から開くのが主流です。しかし、なかにはその逆、ヒンジが後方に設けられ、前方から開くドアもあります。
このドアはクラシックカーでは比較的多く見られる形式です。たとえば1955(昭和30)年発売の初代「クラウン」は後席のドアが前方から開く方式で、前席ドアと合わせて観音開きにすることができました。このほか、2ドア車であるスバル「360」などにも、前方から開くドアが採用されています。この方式であればドアの後ろに回り込む必要がないので、乗り降りがしやすく、停車中に前席から後席に移るのも容易といえましょう。
しかし、この方式のドアには「スーサイド・ドア」、つまり「自殺ドア」ならぬ物々しいあだ名がついています。というのは、走行中に開けたり、半ドアだった場合、風圧で大きく開いてしまう危険があったから。仮に、ドアにもたれかかっていると、外に投げ出される恐れもあったのです。
その後はあまり見られなくなった「スーサイド・ドア」ですが、近年これを採用した車種もあります。
日本車では、2003(平成15)年に発売されたマツダのロータリーエンジン(RE)搭載のスポーツカー「RX-8」が挙げられます。同じくRE搭載のスポーツカー「RX-7」は2ドアでしたが、当時の親会社フォードから4ドアを求められたため、小さな後席ドアが前から開き、前席ドアと合わせて観音開きになるタイプを採用したのです。
Bピラーを後席ドアに埋め込む形でボディーから分離している(いわゆるピラーレス)ので、後席のスペースが小さいながらも、乗り降りの利便性が確保されています。なお、このクルマの後席ドアは前席ドアが開いたときにしか開かない構造で、これにより誤開放を防いでいます。