タミヤはヤマハ「YZF-R1M」を模型化するため何を削り、何を残したのか?
数日かけて車体の各パーツの形を正確に把握できるように細部まで撮影
タミヤにおけるプラモデル製品開発は、車種選定、取材・資料収集、設計、金型製作、成形という流れで進められ、それに平行して製品パッケージや組み立て説明図などの制作が行なわれます。
タミヤの企画開発部スタッフ荒木さんが解説するなかで、最も驚かされたのが取材・資料収集の緻密さです。3Dスキャナーで半自動的に立体データを取り込んでいくのかと思いきや、数日かけてじっくり車体全体や各部を数台のカメラやビデオを使い撮影していきます。
もちろん外観を撮影するだけでは終わりません。「YZF-R1M」の取材は、フロントカウル、アンダーカウル、シートカウル、その他パーツをはずして、中身も細かく撮影します。
実車の取材が終わり次第、模型の設計に入るわけですが、この工程ではどこにこだわり、どこを妥協するのかという見極めが重要とのこと。たとえば実車で数ミリのパーツを1/12スケールのプラモデルで再現するのは現実的ではありません。またコスト的な制約からも、実車の構造を完全に踏襲することは困難です。
忠実に造形する部分と、妥協する部分を分ける
そこでタミヤでは、実車の機能に関わる部分を優先してプラモデルに再現しています。たとえば「YZF-R1M」の特徴的なライトとエアダクト周りは、カウルをはずした状態の実車構造を踏襲しています。露出しているエンジンの忠実性をできるだけ高めるのは当然のこと、フレームも車体を構成する重要な要素なので、再現度を高めるために部品点数を限定し、できるだけ多くの造形を一体成形としています。
一方妥協した点は、ディスクブレーキの穴が挙げられます。金型としては穴を空けることは可能ですが、製造時に不具合が発生する可能性があります。このような非常に細かい造形については、プラモデルを購入した方がそれぞれ腕を振るい表現する箇所となるわけです。
前出の荒木茂樹氏は「実車の構造を理解するのにも役立つのではないか」と製作者としての自負を語っています。実車「YZF-R1M」のオーナーはもちろんのこと、サーキットシーンで活躍する雄姿に魅せられた方は、ヤマハ、GKダイナミックス、そしてタミヤの3社が作り上げた「1/12オートバイシリーズ ヤマハ YZF-R1M」を自ら製作し、マシンの理解を深めてみてはいかがでしょうか。
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