売れ過ぎても困る? スズキ 新型「ジムニー」の納期が長引く理由とは
発売当時「ハスラー」も一時は半年待ち、その時の対応策は
しかしそうはいっても、ジムニーの納期を遅延させたまま、放置することはできません。顧客を待たせれば、さまざまな不満が生じるからです。
多くの顧客は、車検期間の満了が近づいた段階で、マイカーを下取りに出して新車を買います。この納期が長引くと、新車が納車される前に車検期間が満了してしまいます。改めてマイカーの車検を取って乗り続けるか、マイカーを手放してクルマを持たない状態で新車の納車を待つか、という選択を強いられます。
下取りに出すマイカーの査定も面倒です。クルマの価値は時間の経過に伴って下がるため、現時点で査定しても、納期が半年後となれば価値が変わるからです。この間に大きなキズが付いたりする可能性もあるため、改めて査定をする必要が生じます。納期が伸びると、顧客と販売店に多大な迷惑をかけてしまいます。
2014年1月に発売されたスズキ「ハスラー」も、一時は半年くらいまで納期が伸びました。この時、下取り車がある顧客については、低価格でカーリースを行なったことがあります。下取り車は予定通り車検期間が満了する前に売却して、そこからハスラーが納車されるまでは、ワゴンRなどのリース車両に少ない出費で乗ってもらったわけです。メーカーや販売会社としては相応のコストを要しますが、顧客満足度は下がりにくく、リースを活性化させるオマケも付きました。
ちなみに最近の国産車メーカーでは、新型車を発売する数ヶ月前に予約受注を開始して、台数を貯め込むのが流行しています。そうすれば生産を伴う発売と同時に、効率良く納車を始められます。
ただし予約受注の段階では、顧客と販売店は実車のない状態で商談を行い、メーカーに注文を入れます。このリスクを避けて試乗した後で注文すれば、納期が長引いてしまいます。
こういったやり方が横行する理由は、生産の合理化です。予め注文を取っておけば、販売台数や売れ筋グレードなどが、生産開始の前に分かります。そうすれば、下請メーカーに対する部品の発注などを正確に行なえます。メーカーの都合を優先して顧客を待たせるのが、当たり前になりました。