ライダー談義の必須ワードは“ハチハチNSR” これを知っていれば、もうアナタはバイクツウ!!
なぜゆえに“ハチハチ”が最強と言われるのか……!?
NSR250Rはその後もモデルチェンジを繰り返し、発売され続けますが、どうして88年式が最強などと言われるのでしょう。それはメーカーによる自主規制が90年代から厳しくなっていくのと同時に、ユーザーらの間にもただ単にハイスペックであることだけでなく、扱いやすさを求める声も聞こえ始め、過激なモデルが影を潜めていくからです。
89年に政府から交通事故非常事態宣言が出されると、メーカーによる馬力自主規制が強化されます。NSR250Rは90年式(MC21)でコンピューター制御のマップを見直し、扱いやすさも兼ね備えた出力特性を実現しました。91年に400ccは馬力上限だった59PSを53PSに、250ccは45PSを40PSに引き下げようと行政指導にも近い形で決まり、各社の馬力競争は終焉を迎えていくのです。
動力性能こそ最大の価値だったレーサーレプリカにとってはスペックの低下は痛手ともいえ、各社は生産期限であった92年秋までモデルチェンジをしないという策に出ますが、後に登場したモデルも完成度が高いとバイクファンの間では言われています。
すでに完成の域に達したと言われていたNSR250Rでしたが、93年11月にコンピューターの容量を8bitから16bitに増やし、演算処理能力を大幅に向上させ、高剛性の片持ちスイングアーム「プロアーム」を採用したMC28型を発売。量産市販車として世界初のメモリーカードシステムでのイグニッションONも注目を集めました。
このように、ホンダの威信をかけて熱い時代を駆け抜けたNSR250Rシリーズは、いまなおバイク好きたちの語りぐさになっているのです。NSRの変遷を辿れば、その頃のバイクシーンも垣間見られるのですから、たしかに面白いです。
80~90年代のバイク談義に花を咲かせる人がいたら、ぜひ「NSR」というキラーパスで返してみてください。
【了】
Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)
バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。