世界初の二輪HV、ホンダ「PCXハイブリッド」はどんな乗り味? モーターアシストで圧倒的加速力

量産二輪車初採用のハイブリッドとはいったいどのようなものなのか?

 エネルギー源として、シート下トランクの後ろ半分のスペースに単体重量2.6kgの48Vリチウムイオンバッテリーが積まれました。従来からある鉛バッテリーは灯火類を中心に担当しています。

ラゲッジボックス後ろ半分のスペースに48Vリチウムイオンバッテリーが積まれる

 モーターは新たな改良を加えているものの、基本的にはエンジン始動用のACGスターターを利用していて、大幅な重量増にはなっていません。1.9馬力分のパワーがここで上乗せされ、4000回転でおよそ33%、5000回転で約22%ものトルク向上となりました。

 モーターのアシスト力は2つのモードから選べ、手元のスイッチで切り替えることができます。「Dモード」に設定すると、適度なアシストで低燃費にも寄与しますが、「Sモード」だとアシストが強まりよりスポーティな走りが楽しめるのです。アシスト力はメーターのインジケーターで確かめられ、「Sモード」だとバーグラフが伸び上がり、それだけバッテリーの消費は多くなりますから、シーンや状況によって2つのモードを切り替えるといいでしょう。

 いずれもアイドリングストップ機構が働き、停止するとエンジンが即座に停まります。従来では3秒ほど掛かっていたエンジン停止が、PCXハイブリッドではすぐに停まるという印象に変わり、目覚めもよりスムーズになっていることも付け加えておきます。

 ちなみに「D」と「S」の他にアイドリングストップをしない「アイドリングモード」に設定することもでき、このとき走行特性は「Dモード」と同じになります。信号待ちでこれも選びましたが、アイドリングストップに慣れてバッテリー残量に不安がなければ、このモードはきっと使わなくなるのではないかと思いました。タイムラグなくエンジンは目覚めそのままスムーズに発進でき、かつて感じたアイドリングストップへの不安感はもうPCXハイブリッドでは払拭されているのです。

重量増でもハイブリッド化で軽快に走行可能

 車体は『PCX』と共通で、ハイブリッド化によって車両重量が130→135kgへと増加しましたが、重さは感じませんでした。コーナーは軽快に駆け抜けますし、車体は安定していて落ち着いています。

 反転液晶表示のデジタルメーターは専用で、チャージ/アシストレベルや走行モードも表示され、すぐに知りたいことが把握できました。

 シート下のトランク容量は、ハイブリッドシステムを搭載しながらも容量23L(PCXでは28L)を実現し、ラゲッジボックスの収納力も必要最低限は確保してあります。

 本体価格はガソリンエンジン車の『PCX』が31万7000円(税抜き)ですが、『PCXハイブリッド』は40万円(税抜き)と、大きく上がらなかったのも魅力といえるでしょう。なんたって、友だちに自慢できること間違いなしです。“HYBRID”のエンブレムも誇らしげに見えます。

【了】

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Writer: 青木タカオ(モーターサイクルジャーナリスト)

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。自らのモトクロスレース活動や、多くの専門誌への試乗インプレッション寄稿で得た経験をもとにした独自の視点とともに、ビギナーの目線に絶えず立ち返ってわかりやすく解説。休日にバイクを楽しむ等身大のライダーそのものの感覚が幅広く支持され、現在多数のバイク専門誌、一般総合誌、WEBメディアで執筆中。バイク技術関連著書もある。

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