トヨタの新型車「カローラクロス」の発売に合わせて、トヨタのメーカー系カスタマイズパーツを手掛けるモデリスタブランドから新型車カローラクロス用のパーツが登場しましたが、どのような特徴があり、モデリスタゆえのデザイン手法とはどのようなものなのでしょうか。
人とは違う“プラスα”なら自動車メーカー直系のブランドが安心
トヨタ「ライズ」、「ヤリスクロス」、「C-HR」、「RAV4」「ハリアー」と万全の包囲網を取るトヨタのクロスオーバーSUVモデル。
そんな中、新たに投入されたのが「カローラクロス」です。
扱いやすいボディサイズに高いユーティリティ、カローラ譲りの走りと、コンパクトクロスオーバーに必要な要素が全て盛り込まれており、人気モデルになるのは間違いないでしょう。
街中で見かける機会が増えると、人とは違う“プラスα”が欲しくなるはず。ユーザーの好みは千差万別なので、中には「ノーマルでは物足りない」、「更に個性をプラスしたい」、「もっとカッコよくしたい」と言う人もいると思います。
そんな個々の要望に合わせて最適化する事が「カスタマイズ(=チューニング)」になります。ただ、初心者には「何を選べば良いのか」という悩みや、「そもそもエアロパーツは必要?」という疑問も多いと思います。
カスタマイズを「気軽」かつ「安心」して楽しむにはどうしたらいいか。
そのひとつの回答は、自動車メーカー直系のブランドを選ぶことで、トヨタでいえば「モデリスタ」です。
モデリスタは、さまざまなカスタマイズブランドの中でも、クルマをカッコよくするための「ドレスアップ」を得意とするブランドです。
トヨタの直系ブランド「モデリスタ」とは
そんなモデリスタは1997年に設立。当初はトヨタの量産モデルでは対応できない“ワンオフ”モデルの開発・製作・販売を行なうオートクチュールが発端で、まさにカスタマイズのために生まれたブランドです。
現在は、その技術・知見を活かしたドレスアップアイテムを数多くラインアップしていますが、その中でも高い人気を誇るのは、エクステリアの印象を大きく変える「エアロパーツ」です。
そこで、カローラクロスのアイテムを中心にモデリスタのこだわりを紹介していきたいと思います。
今回は、クルマにそこまで興味がないユーザーにも関心を持って欲しいという「初心者目線」も含めて、インタビュアーは元レースクイーンで現在はイラストレーター兼漫画家という肩書を持つ、小野さゆりさんです。
彼女は免許を持っていませんが、何もない所から生み出す……というクリエーター目線で質問をしてもらいますが、彼女だけでは心配(!?)なので、カスタマイズ事情に長けている筆者(山本シンヤ)がサポート。
答えていただくのは、モデリスタのデザイナー・山﨑和起さんとデジタルモデラー・狩谷功一さんです。
では、モデリスタは「カローラクロスのカスタマイズにどのようなこだわりがあるのか」。そして、「モデリスタのデザインとはどのように作られていくのか」。のふたつのテーマで迫ってみます。
モデリスタのデザインとはどのように作られていくのか!デザイナーとデジタルモデラ―に聞いてみた
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MODELLISTAエアロパーツセット、クールシャインキット等全てのモデリスタパーツが装着されたカローラクロス |
5 点のメッキガーニッシュで構成された『クールシャインキット』 |
事前に山本さんにクロスオーバーSUV、そして新型車カローラクロスについて聞きました。カローラクロスはオフロード志向のデザインが採用されていますが、なぜエアロパーツが必要なんでしょうか?
カローラクロスはアクティブなシーンで映えるデザインですが、普段は舗装路……つまり日常で使う事が多いです。そんな時、「もう少し都会的のほうがいいよね?」という意見も多く、アウトドアよりも都会で映える見た目にするためにエアロパーツを用意しています。小野さん、実際にノーマルと見比べてどうですか?
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全然違う? モデリスタ仕様(左)と標準仕様(右)【画像提供:(株)トヨタカスタマイジング&ディベロップメント】 |
全然違う? モデリスタ仕様(左)と標準仕様(右)【画像提供:(株)トヨタカスタマイジング&ディベロップメント】 |
同じカローラクロスなのに印象が全然違いますね。モデリスタのほうは車高が低く感じるのと、クルマの下側がドシッとしているので安定感が高く感じます。
車高はノーマルと変わらないので、エアロパーツを付けたことで、そのように感じられたと思います。レーシングカーがカッコいいと感じる要素のひとつに、「路面との隙間の小ささ」がありますが、それは普通のクルマも同じです。
ノーマルはSUVらしさを強調したデザインです。ただ、街中をメインに乗る人には「別の提案があってもいいよね?」といったご要望もあるようです。ご覧の通り、エアロパーツの有無でイメージがガラッと変わります。
フロントスポイラー、サイドスカート、リアスパッツ、カラードフェンダーなどを設定しています。
私は随所に見えるメッキパーツがオシャレでいいなと感じました。
メッキパーツはワンポイントのアクセントのような役割かな……と。例えるならピアスを付けるような感じです。
デザインする上でコンセプトがあると思いますが、今回のカローラクロスは?
このカローラクロスのデザインコンセプトは、『DARING but DELICATE(デアリング バット デリケート)』です。「大胆だけど繊細」という意味です。
動きのある大胆なグラフィックですが、ディテールまで気を配った造形で、先進性と上質感を合わせ持つデザインとしています。
また、個々のコンセプトとは別に、モデリスタのデザインには「Resonating Emotion」という大きなテーマがあります。それは簡単に言うと「ベース車と共鳴しあい、更に魅力を高める」です。好き勝手にデザインするとブランドが解らなくなってしまうので、モデリスタとしてのブレない軸の中で挑戦を行なっています。
ベース車より更にエモーショナルで魅力的にすることに加えて、ノーマルのデザインを尊重し調和することです。我々はトヨタグループの一員で、トヨタ車の魅力を引き上げる事が目的です。なので、ノーマルを活かし、でもパッと見た時にノーマルと違う個性が求められているのかな……と。そのために色々な手法を盛り込んでいます。
つまり、「カッコ良ければ何でもOK!!」と好き勝手にデザインしているわけではないんですね?
その通り。色々な制約の中で個性を表現しているのがモデリスタのスゴいところです。さらにモデリスタのアイテムはニューモデルと同じタイミングで発売されます。最初に出るのでデザインのトレンドを作る役目も……。
アパレル業界の「ランウェイショー」みたいですね。「このクルマはこれがトレンドです」みたいな……。ただ、クルマは洋服などと違いガラッと変えることができないので、難しそうですよね。ちなみにデザインはどのように? 最初にスケッチを描くのは解りますが、その後は粘土を削って……みたいな?
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モデリスタのデジタルモデラ―狩谷氏 |
モデリスタのデザイナー山﨑氏 |
昔は紙に絵を描いて粘土で造形しなら……もやっていましたが、今は2Dのスケッチから3Dのモデリングまで全てデジタルツールを使って行なっています。
実は私、イラストや漫画以外に衣装のデザインもやっていますが、2Dから3Dのやり取りはどうやっているんでしょうか?私は見え方・伝え方が難しく、2Dで見せると「小野さん、それはちょっと難しい」と言われることが多々あり……。
山﨑が描いたデザインを元に3Dでモデリングするのがデジタルモデラーの仕事です。小野さんの言うように、二次元から三次元にした時に成り立たなくなる事も多いです。デザインを崩さずにバランスよくチューニングしています。
やっぱりそうですよね~。他にはどんな苦労がありますか?
エアロパーツは車両の上から取り付けるので、基本的には“足し算”しかできない事、そしてベース車のカタチに影響を受けるので、自由に造形するのが難しいのです。今回のスケッチを見て、「力強さ」、「突進感」を表現したいと思いました。そのためには奥行を出したかったのですが、SUVなので長くしすぎるとSUV感が薄れてしまう。
なので、突出量は最小限で形の深さを表現しなければなりません。そんな制約の中でスケッチのイメージに近づけていくのがデジタルモデラーの腕の見せ所でもあります。
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画像に作成したサイドスカートを合わせてみる |
「力強さ」、「突進感」を表現したかったと語る狩谷氏 |