エスティマやアクアも…なぜマイナーチェンジばかり? 新車をフルモデルチェンジをしなくなった理由とは
フルモデルチェンジの周期が長期化する原因とは
今の日本車メーカーは、ダイハツを除くと、世界生産台数の80%以上を海外で販売しています。国内は20%以下の市場ですから、国内向けのミニバンや5ナンバーサイズのセダンは、商品開発が特に冷遇されやすいです。
また別の開発者からは「安全性、自動運転、通信などの技術開発、電動化を含めた環境対応が急務になり、開発費用も高騰しています。いわゆる選択と集中を迫られていることも、フルモデルチェンジの周期が長期化する原因です」という話も聞かれます。
今の自動車メーカーでは、広範囲の技術開発を行う必要があり、昔に比べてお金の使い道が増えました。そのために車両本体の開発費用を抑える必要があるわけです。
例えば2018年6月26日にフルモデルチェンジされた新型トヨタクラウンは、プラットフォームを一新させて、上級ブランドに属するレクサスLSと共通化しました。以前は「レクサスとトヨタブランドでは、メカニズムをなるべく共有しない」という意見を主にレクサス側の開発者から聞いた時期もありますが、今後はトヨタの後輪駆動乗用車が使うプラットフォームは1種類に統合されます。これも「選択と集中を迫られている」からです。
このように見てくると、先進技術の自動運転、プラットフォームをレクサスLSと共通化したことで走りが良くなったといわれるクラウン、私たちのクルマ選びに影響を与えるフルモデルチェンジの長期化まで、すべて繋がっていることになります。
これらの内、フルモデルチェンジの長期化は、ユーザーに不利益をもたらす場合があります。新型クラウンのようなプラットフォームの一新を伴うクルマ造りは、フルモデルチェンジが前提になるからです。ボディを大幅に軽くして燃費を向上させたり、強度を高めて走行安定性を抜本的に改めるには、マイナーチェンジでは対応できず、フルモデルチェンジを実施せねばなりません。
安全装備も同様です。ホンダの開発者は「N-BOXが(上級の安全装備とされる)ホンダセンシングを装着できたのは、新型にフルモデルチェンジされて、プラットフォームを刷新するなど車両全体を見直したからです。マイナーチェンジでホンダセンシングを装着するのは困難です」といいます。そうなるとN-WGNやN-ONEは、次期型にフルモデルチェンジするまではホンダセンシングを装着できないということになります。
このようにクルマが大幅に進化するには、フルモデルチェンジが重要な役割を担います。この周期が長引くほど、進化する速度が下がると考えて良いでしょう。今の日本車の状況を見ると、発売から8年以上を経過した車種には、全般的に古さが目立ちます。発売後6~7年以内にフルモデルチェンジを行うのが理想です。