クルマの税金は全部で9種類!? なぜこうなった?不可解な自動車の税金
今の自動車税制は妥協案?
国は道路特定財源を一般財源として残し、今後も自動車ユーザーから徴税を続けたいと考えているのです。
ただし一方的に徴税するだけでは、自動車業界の反発が大きくなるので、自動車取得税と自動車重量税に適用されるエコカー減税と、自動車税のグリーン化特例を生み出しました。
エコカー減税は、主に2020年度燃費基準の達成度合いに応じて、購入時の税金を減額する制度です。達成度合いの高い車種は、購入から3年後に車検を受ける時の自動車重量税も免税としますが、中心は購入時です。
そのために道路特定財源の徴収を続けながら、新車の販売促進にも加担できます。国と自動車業界にとって、Win Winの妥協案が、道路特定財源の一般財源化とエコカー減税のセットといえるでしょう。
この犠牲になるのは自動車ユーザーです。購入時点ではエコカー減税によって税金が減額されたり免税になっても、減税ないし免税期間終了後は本来なら納める必要のない「元・道路特定財源」をキッチリと徴税されます。
残酷な二者択一を迫る今の自動車税制
そしてさらに酷いのは、初度登録から13年を超えた古い自動車の増税です。13年を超えた乗用車の自動車税はおおむね115%に高まり、軽自動車税は最大180%まで増えます。
自動車重量税も同様で、小型/普通車で見ると13年の経過が139%、18年を超えると154%に達します。
国土交通省に増税の根拠を尋ねると「エコカー減税と同様で、環境性能の優れた自動車に乗り替えることを促進するのが目的です。13年という期間は平均耐用年数(自動車の平均寿命)と同等です」と説明しました。
しかし新しい自動車に乗り替えさせることが、エコに繋がるとは限りません。自動車は製造/流通/使用/廃棄というすべての過程で、化石燃料を消費したり排気ガスや二酸化炭素を生み出すからです。
そして何よりもこの増税制度では、古い自動車を使うユーザーの生活が無視されています。公共の交通機関が未発達な地域では、高齢者が13年を超えた自動車を使って、通院や買い物をしているからです。
生活するために自動車が必要だから、仕方なく古い車両を使っているのです。この車両に重税を課して「多額の税金を納めるか、それとも新しい自動車を買うか、どちらかにしますか?」と残酷な二者択一を迫るのが、今の自動車税制といえます。
国と自動車業界のことだけを考えて、最も尊重すべき人達を犠牲にする、福祉に逆行する税制といえるかもしれません。
【了】
Writer: 渡辺陽一郎
1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、2001年にフリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまに怪我を負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人達の視点から、問題提起のある執筆を得意とする。