1度は消えたトヨタ「RAV4」とホンダ「CR-V」、同じ運命を辿るSUVは復活で成功なるか

一クラス下の「C-HR」「ヴェゼル」は大ヒット

 奇しくも日本のクロスオーバーSUVの草の根的存在の2台が、共に日本市場から消えてしまったのですが、その理由はなぜでしょうか? 答えは簡単で海外マーケット優先のクルマ作りにより、日本のユーザーニーズに合わない(特にボディサイズ)クルマになってしまったからです。

ホンダ「ヴェゼル」

 その辺りはトヨタ/ホンダ共によく解っているようで、一クラス下のコンパクトクロスオーバーSUVを用意しました。ホンダは2013年に「ヴェゼル」、トヨタは2016年に「C-HR」を発売、どちらも大ヒットSUVモデルとなっています。

 そんな中、2018年3月末から開催されたニューヨークモーターショーで、5代目となる新型「RAV4」が発表されました。

 歴代モデルは都会が似合うイメージでしたが、新型「RAV4」では八角形がモチーフの個性的なフロントマスクやボディのワイドスタンス化など、「SUVらしさ」を強調したデザインに刷新しました。

 新型「RAV4」の開発責任者、佐伯禎一さんは「クロスオーバーSUVが当たり前になった今、改めて『SUVとは何なのか?』と考え直し、SUV本来の『力強さ』『頼れる相棒』を再定義したカタチが新型『RAV4』になります」と語っています。

一足先に北米・中国で販売している「CR-V」

 一方、ホンダ「CR-V」は今から2年前の2016年に5代目へフルモデルチェンジ。北米を皮切りに中国での販売もスタートしています。

5代目となるホンダ新型「CR-V」

 新型「CR-V」は4代目の正常進化といった感じですが、新型「RAV4」と同じく高級感よりもSUVらしいカジュアルさが増したようなモデルになっています。ボディサイズは全長4587×全幅1855×全高1678mm、ホイールベース2660mmと、新型になってさらに大きくなっていますが、これは後席の居住性アップに加えて、3列シート仕様を設定したためです。

 筆者(山本シンヤ)は今年の冬、北海道・鷹栖にあるホンダのテストコースでこの新型「CR-V」のプロトタイプ(ハイブリッドのAWDで左ハンドルのドイツ仕様)に試乗しました。その時の印象を少しお伝えしたいと思います。

 雪上路面の試乗でしたが、路面環境が悪くなればなるほどクルマの素性や本質が露わになるため、新型をチェックするにはピッタリな条件でした。

 ハンドリングは大柄なボディを感じさせずによく曲がる印象が強かったです。その意味ではスポーティではありますが、見せかけのスポーティさではなく操作に忠実で連続性がある自然なフィーリングで、AWD(四駆)システムを含めて安定性を重視したクルマに仕上がっていました。

 この仕上がり具合をホンダ新型CR-Vの開発責任者、永留高明さんに聞いてみると「SUVに求められるのは“安心感”です。そのため新型『CR-V』は奇を狙わず基本に忠実な走りを目指しました」と語ってくれました。

 昨今、日本市場で輸入車のシェアが伸びていますが、その要因の一つが輸入クロスオーバーSUVの人気です。輸入主要メーカーは大中小と、日本車顔負けの豊富なラインアップを持っています。

 逆に日本車は「ハリアーやC-HRがあるから『RAV4』はいらない」、「ヴェゼルがあるから『CR-V』はいらない」と合理化のために販売をやめたことで、逆に「次に買おうとしたら次期モデルはない」、「ステップアップしたくても買うクルマがない」と、他メーカーに流れてしまっているそうです。

 しかし、「日本専用車を新たに開発してくれとは言わないが、他メーカーへの流失阻止のため、SUVのバリエーションは増やしてほしい」という販売現場の要望を叶えるために、海外専用モデルになっていた「RAV4」と「CR-V」をほぼ同時期に日本へ再導入という流れになったというわけです。

 もちろん、ボディサイズの問題は必ず出てくると思いますが、地域によってはサイズをそれほど気にしない所もありますし、SUV検討ユーザーにはむしろ選択肢が増えるというメリットはあるでしょう。

 一度廃止したブランドを復活させること簡単ではありません。多くの労力やお金もかかります。そのため、復活させるからにはメーカーも「販売が伸びないので廃止」といった短絡的な考えではなく、長期的な視点で見守ってほしいと思います。

【了】

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Writer: 山本シンヤ

自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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