自動車産業の発展とともに歩んできたトヨタですが、1996年、市販車生産60周年を記念し、特別なクルマが限定販売されました。
　
　それがトヨタ「クラシック」です。トヨタ車としては異例づくしとも言える、非常に特殊で希少なクルマについて、SNSなどでは今もなおさまざまなコメントが投稿されています。

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　クラシックは、「クラシックカーのデザインを現代の技術で再現する」というコンセプトのもと、1996年に発売されました。製作を担当したのは、トヨタテクノクラフト（現：トヨタカスタマイジング＆ディベロップメント）です。

　最大の特徴はそのデザインです。丸型ヘッドライトやメッキグリルのほか、1950年代当時一般的だった大きな張り出しのホイールアーチを設けるなど、クラシックカーを見事に再現。

　デザイン元となったのは「トヨダ AA型」。1936年、トヨタ自動車の前身となる豊田自動織機製作所 自動車部が発表した、記念すべき純国産乗用車の第一号です。これを発表した翌年、トヨタ自動車が設立され、自動車メーカー世界トップまでの歩みを進めることになるのです。

　車体のベースは、エクステリアでは一切の面影を感じさせませんが、実はピックアップトラックの「ハイラックス」（5代目）。そのため型式は「GA-YN86」とそのままとなっていました。

　ちなみに、ベース車をハイラックスとした理由は、トヨダ AA型と寸法が近かったためと言われています。

　ボディサイズは、全長4885mm×全幅1735mm×全高1650mmで、ホイールベース2850mm。車両重量は1480kgです。

　エクステリアは、メーカー特装車「TECS」シリーズを数多く手掛けてきたトヨタテクノクラフトの職人による手作業で作り上げており、その分生産台数はわずか100台と、極めて珍しいクルマです。

　クラシカルなブラックとワインレッドの2トーンボディは、トヨダ AA型風の流線的な美しいボディを組み合わせます。

　インテリアも真っ赤な本革シートを備えるほか、随所にウッドパネルを装着し、ナルディ製のウッドステアリングも採用。エクステリアと比較するとハイラックスの雰囲気はありますが、それでも非常に贅沢な、特別感のあるものに仕上がっています。

　パワートレインは、ハイラックスに搭載されている2リッター4気筒OHVガソリン「3Y-E」型に4速ATを組み合わせ、最大出力97馬力を発揮。駆動方式はFRです。

　新車当時の価格は817万円（東京地区）でした。

　そんなクラシックですが、非常に高価だったこともあり、クラシックカー愛好者やコレクターなどが購入するにとどまりました。

　ただし、実に珍しいモデルでその内容も非常に手が込んでいたこともあって、登場から30年近く経過した現在でも、中古車市場では500万円を超える価格で取り引きされています。

　年数が経過したことから現存台数は減っている可能性が高く、なかには海外に中古輸出されるケースもあることから、国内にとどまって走行可能な状態を維持しているものは極めて少ないと考えられます。

　そうしたこともあって、SNSなどでは「そういや今日、トヨタクラシックとすれ違った…」「市内で見かけた」など、“目撃談”が共有されるほどのレアモデルとなりました。

　また、「それにしても今となっては、すごい値段だな」「12、3年前に近所の車屋で見かけた時は180万くらいで売ってたのを覚えている」など、もはや骨董品のように希少価値がぐんぐん上がっていることを示唆する証言もあります。

　このほか、「とてもハイラックスをベースにしているとは思えん」「本当にすごいクルマを作ったよな。あっぱれ」と、非常に斬新な出で立ちを改めて評価する向きもあるようです。