なぜ日本政府は「税金を取ることに熱心なのか」 約50年続く「ガソリンの暫定税率(25.1円/L)」廃止も時期不明… 安くなるかと思いきや「補助金縮小」で小売価格は高くなる? 消費者への影響は?
2024年12月11日に自民党、公明党および国民民主党の3党の幹事長が会談をおこない、「年収103万円の壁」の見直しと「ガソリンの暫定税率」の廃止について合意しました。とくに「ガソリンの暫定税率」は1974年に導入され約50年続いたものでしたが、今回の廃止で自動車ユーザーには一体どのような影響があるのでしょうか。
自民、公明、国民民主の幹事長が「ガソリン税暫定税率」の廃止に合意! 25.1円/Lの値下げに? 1974年に導入された「暫定税率」って一体どんなもの?
2024年12月11日、自民党、公明党、国民民主党3党の幹事長が会談し、「年収103万円の壁」の見直しと「ガソリンの暫定税率」の廃止について合意しました。
では、自動車ユーザーには一体どのような影響があるのでしょうか。
今回の会談は、現在の税制課題となっていた、年収103万円を超えると所得税が発生するいわゆる「103万円の壁」を撤廃しようと国民民主党が求めたもので、同党はその基準を178万円まで引き上げることを主張していました。
これに関して、3党は「国民民主党の主張する178万円を目指して、来年から引き上げる」として合意し、期待の声が多く寄せられています。
また、長らくJAF(日本自動車連盟)などが廃止を要求してきたガソリンの暫定税率については、明確な廃止時期は示されていないものの、SNS上においては「これは大きな一歩」「素晴らしい」などと評価する声が聞かれました。
その一方で「廃止時期が先送りされないか心配」「暫定税率を廃止する代わりに別のところで増税しそう」といった懸念の声も上がっています。
では、ガソリンの暫定税率の廃止は自動車ユーザーにどのような影響を与えるのでしょうか。
そもそもガソリンには複数の税金がかかっており、ガソリン1リットル当たりの小売価格は次の計算式で求められます。
(ガソリン自体の価格+石油石炭税2.04円+温暖化対策税0.76円+ガソリン税53.8円)×1.1(消費税10%)
このうち、ガソリン税53.8円は、1949年に定められた当初は28.7円でした。
ところが、1974年から当時の田中角栄政権が、道路の建設・整備にあたって財源が足りないとして、「暫定」で上乗せ。これを「暫定税率」と呼びます。
その後2度のオイルショックなどを経て税額が引き上げられ、1979年以降25.1円となりました。
そして、暫定税率は2008年3月末に一旦失効しましたが、当時の福田康夫内閣が存続を図ったことで復活。
そのうえ2009年4月、税金の使い道が限定されない一般財源に変更。道路整備以外に使われることになり、当初の意義とは全く合致しない制度になったのです。
しかし、2010年度の税制改正において、暫定税率を含めた1リットル当たり53.8円のガソリン税率が「当分の間」維持されることが決定し、現在に至っています。
つまり、本来の税率を上回る「特例」税率が1974年から約50年も続いている状況でした。
またガソリンにかかる税金をめぐっては、もうひとつの問題点があります。
上記の計算式のとおり、ガソリン税などの税金に、さらに消費税がかかる「タックス・オン・タックス(二重課税)」の状況を呈しており、JAFなどではこれは異常だとする指摘もあります。
石油需要の拡大や、中東情勢の緊迫などで原油価格自体も高騰し続けるなか、生活に必要なガソリンにかかる税率の是正が求められてきました。
このような情勢を受け、今回3党の合意によって、ようやくガソリンの暫定税率25.1円を廃止する決定がなされたといえるでしょう。
ここで気になるのは、暫定税率が廃止された場合、ガソリン価格がどの程度安くなるかという点です。
経済産業省資源エネルギー庁によると、2024年12月9日時点のレギュラーガソリンの店頭小売価格は、1リットル当たり175.7円(消費税抜で159.7円)であり、ただちに暫定税率25.1円が廃止されれば小売価格が約148円まで下がります。
ただし12月9日現在、一定の小売価格を超えると燃料の元売り事業者に補助金を出す「燃料油価格激変緩和補助金」(いわゆるガソリン補助金)の施策が実施されています。
これに基づいて、ガソリンなどの燃料に対する補助金が14.9円支給されていることでガソリン価格が抑えられていることもあり、仮にこの補助金がなければガソリン価格は163円程度となることが見込まれます。
なお政府は2024年11月、このガソリン補助金の規模を段階的に縮小し、これまで1リットル当たり175円程度に抑えてきたガソリン小売価格の上限を185円程度に移行する方針を示しています。
そのためSNS上では「暫定税率が廃止されても、ガソリン補助金が縮小されたら結局ガソリン価格はそんなに変わらないのでは?」との意見も上がっています。
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これまで約50年にわたって課せられてきた暫定税率ですが、ようやく廃止される方針が固まりました。
とはいえ現状では廃止時期が明らかになっていないほか、二重課税の問題、廃止の代わりに新たな税制が作られる可能性も指摘されており、政府の今後の動向に注視していく必要があるといえるでしょう。
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