なぜトヨタ「ランクル」は3タイプも用意? 最上級「豪華モデル」からめちゃ“タフ仕様”まで展開 バリエーションが増えた理由とは

2つの「ランクル」から3つの「ランクル」へ…

 その後、1984年になるとヘビーデューティーは4代目の70シリーズに世代交代を果たします。

 70シリーズのデビュー翌年となる1985年には、トヨタは「ランドクルーザー ワゴン」を追加します。

 70系のショートボディをベースに、より快適性を高め、外観は軽快感あるものとしたモデルです。

 その狙いは、1980年代のレジャーユースの増加に応えようというもの。街中での使い勝手を高め、より乗用車的に使えるスタイリッシュな4輪駆動車。これが、今に続くライトデューティーの発端となります。

 つまり、1950年代にヘビーデューティーのみで生まれたランドクルーザーですが、1960年代にレジャー向けとしてステーションワゴンを追加し、1980年代になってさらに街乗りも見据えたライトデューティーを加えたのです。

 もとは1つのモデルが3つのシリーズに分化したのは、時代時代のニーズに応えてきたというのが理由と言えるでしょう。

 そうして3つになったランドクルーザーのうち、ライトデューティーは、1990年よりランドクルーザー プラドと名乗るようになり、より乗用車的なイメージが与えられることになります。ちなみに、当時のライバルは三菱自動車の「パジェロ」でした。

 そんなランドクルーザー プラドは代を重ねるほどに、より豪華で高級なクルマに進化していきます。気が付けば、ステーションワゴンと遜色ないほどになってしまっていたのです。

質実剛健に回帰した「ランクル250」
質実剛健に回帰した「ランクル250」

 そこを是正したのが新しい250シリーズです。

 250シリーズは、より生活実用を目指して、質実剛健なランドクルーザーの伝統を感じさせるアクティブなルックスとなりました。ここで名称を変えたのは、“プラド”という名前に高級なイメージが強く刻まれていたからではないでしょうか。

 また、3つあるシリーズのうち、ひとつだけプラドというペットネームを使う違和感を消し去りたいという考えもあったはずです。

 そうした250シリーズの路線変更もあり、現在のランドクルーザーは、ステーションワゴン、ライトデューティー、ヘビーデューティーという3つの流れと個性の違いが鮮明になっています。

「豪華で高級」な300、「普通に使う」250、「ハードな使用に耐える」70というわけです。ユーザーとしては、今では買うときに迷わずに済むシリーズ化がなされたのではないでしょうか。

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Writer: 鈴木ケンイチ

1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。特にインタビューを得意とし、ユーザーやショップ・スタッフ、開発者などへの取材を数多く経験。モータースポーツは自身が楽しむ“遊び”として、ナンバー付きや耐久など草レースを中心に積極的に参加。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを、分かりやすく説明するように、日々努力している。最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。

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