トヨタ「カローラ レビン」(AE86・第5世代) ユーザーが育てた「ハチロク」とは?

車名よりも型式名のほうが広く知られるクルマというのはそうありませんが、こと「レビン/トレノ」の「ハチロク」は別格でしょう。「ハチロクレビン」こと第5世代「カローラ・レビン」はいかにして、いまの地位を築いたのでしょうか。

クルマ好きのあいだの「あのころのクルマ」

 たとえば、ラリーで大活躍する「セリカ」。後の「スープラ」に発展する「セリカXX」は本格的なスポーツカー。スーパーカーと同じミドシップ方式を採用した「MR2」も1984(昭和59)年にデビューしています。ライバルとしてホンダには「CR-X」があります。また、「シビック」に「タイプR」は生まれていませんでしたが、強力なエンジンを搭載するグレードが用意されており、そのころから「シビック=速いクルマ」というイメージがありました。

「レビン」は英語で「稲妻」。写真の3ドアハッチバックのほか、2ドアクーペタイプもラインナップしていた(画像:トヨタ)。

 また、当時は80年代後半のバブルに向かって、ゴージャスでパワフルなものが好まれた時代です。デートにはクルマが必須。そのためのデートカーが大いにもてはやされていたのです。

 その筆頭が、1982(昭和57)年に登場した2代目「プレリュード」。筆者(鈴木ケンイチ:モータージャーナリスト)は1987年に成人式を迎えたのですが、高校生から大学生になったばかりの僕らの仲間は、みんな「プレリュード」に憧れます。そのライバルとして日産が用意したのがS13型「シルビア」でした(最初はデートカーだったのです)。またクルマ好きの男子は、「鉄仮面」と呼ばれた「スカイライン」を中古で手に入れていました。少し上の先輩は、ツインターボを搭載した「チェイサー」を購入。できたばかりの常磐高速道を走る「チェイサー」の後ろに乗せてもらった思い出があります。また、別の女性の先輩は、おしゃれなクルマとして初代「インテグラ」を購入。AE86の前の世代の「カローラ・クーペ」を愛車にする女性も筆者の知り合いにいました。当時は、女性がクーペを乗り回すのは、ごく当たり前のこと。速い遅いというよりも格好良さで選んでいたようです。

「カローラ レビン(AE86)」のインパネまわり(画像:トヨタ)。

 いまと違って、クルマ好きな人がたくさんいた時代です。そして、それに応えるクルマもたくさんありました。そのため「レビン/トレノ(AE86)」は人気があったとしても、限定的なもの。実は、筆者が20歳のときに友人が、「レビン(AE86)」を購入しましたが、「ふ~ん」という非常にテンションの低い失礼な態度をとってしまいました。

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