【試乗】トヨタ「カムリ」10代目の実力 「オールニューTNGA」がもたらす「走り」とは

乗り心地とコーナリング、高いレベルにあるがゆえに…?

 もし新型「カムリ」に言い及ぶことがあるとすれば、それは運動性能にさらなる連続性を持たせて欲しい、ということだけでしょうか。

 前述の通り、乗り心地は極めてトヨタ的。かつ北米ユーザーに好まれそうな、ふんわりとした優しいライド感を持っています。そしてこれがカーブになると、車体がピシッと安定して、ちょっと驚くくらい高いGを維持したまま旋回してくれます。

 その味わいは、欧州列強の威圧的なほど高いスタビリティを軸とした走りとはまた違い、確かさと軽やかさが高い次元でバランスした走り、あえて言うなら現在のBMWに近い乗り味だと思います。

フロント&リヤサスペンション(画像:トヨタ)。

 ただその「ゆったりライド」と「スポーティライド」の切り替わる瞬間が、シームレスにつながらない感じが少しだけあります。具体的にはステアリングを切り込んで、フロント2輪のタイヤにかかった荷重が外側2輪へと移行するとき、ゲインが急に立ち上がって「ヨイショ」と一呼吸置く動きが目立つ。それぞれの性能は極めて高いのですが、それゆえに目立つのです。

 新型「カムリ」には、可変ダンパーが装着されていないため、乗り心地性能とコーナリング性能を両立しようとしたときにこの動きが出るように思います。また次世代の自律運転をにらんで強化される電動パワーステアリングのモーター制御も、まだまだコンフォートとスポーツの間をほどよく制御しきれていないようです。その証拠にACC(アクティブ クルーズ コントロール)をアクティブにした領域では、非常に節度感のあるステアリングフィールとなります。

 また個人的には高級車としての動的質感を表現する上で、こういうときにこそ後輪からトルクを押し出すFR(フロントエンジン・リアドライブ)と、前輪で車体を引っ張るFF(フロントエンジン・フロントドライブ)の差が出るのだと感じました。クラスこそひとつ上ではありますが、そういう意味でトヨタの「クラウン」はやはり偉大であるし、次期型がTNGAで作られることにさらなる期待感を持ちました。

Bi-Beam LEDヘッドランプ(オートレベリング機能付)+LEDクリアランスランプ+LEDデイライト(画像:トヨタ)。
マルチインフォメーションディスプレイ(7.0インチTFTカラー)(画像:トヨタ)。
パノラマムーンルーフ(チルト&スライド電動[フロント側]/ワンタッチ式/挟み込み防止機能付)(画像:トヨタ)。

 ともあれ新型「カムリ」は、非常に高い次元でバランスが取れたセダンです。自動車が普及した今、ミニバンがオカーサンの要求を満たし、SUVが若者を中心にカジュアルな人気を集めるようになりましたが、世のオトーサンの手が届くセダンとして、フォーマルを気取れる気高さをしっかりと維持し、走りの性能に磨きをかけてきました。

 新型「カムリ」をして「セダン復権!」などというありがちな言葉で締めくくる気はないですが、いまだにこのジャンルが日本でも生き残ってくれていることは、とても嬉しく思います。ニッポンのオトーサンたち、ぜひ一度、新型「カムリ」に試乗してみてください。

【了】
提供:乗りものニュース

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Writer: 山田弘樹(モータージャーナリスト)

自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経てフリーランスに。レース活動の経験を活かし、モータージャーナリストとして執筆中。並行してスーパーGTなどのレースレポートや、ドライビングスクールでの講師も行う。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員。

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