そんな馬運車は、競走馬を慎重に運んでいることから、走行スピードが比較的低速であったりなど、ほかのクルマとは異なる走り方をしている場合があります。

　馬運車のなかには「割込厳禁」と大きく赤字で書かれているものがありますが、その表記について、警視庁の交通相談コーナーの担当者は、次のように話します。

「前提として、割り込みに対する違反は存在するため、馬運車であろうと急な車線変更などによる割り込み行為は禁止されています。

　その一方で、馬運車に対して割り込んだ場合、違反になるという道路交通法は存在しません。

　また、『割込厳禁』と書かれているから、違反になるというわけではなく、警察の許可を得て他車よりも優先されているというわけでもありません。

　ですが、馬は臆病な性質を持つため、割り込んだ結果、急ブレーキをかけてそれに驚いて車内で馬が暴れ出し、事故につながるという恐れがあります。

　そうなった場合は、割り込んだドライバーに対して多額な損害賠償が請求される可能性も想像できるでしょう。

　そのような二次災害を避けるためにも、割り込みに対する啓発をしているものと考えられます。

　優先権を持っているわけではありませんが、割り込みそのものは前提として違反行為であることを考えると、嘘をついているわけでもないので、周囲のためにも啓発しているといえます」

　道路交通法第32条によると、割り込みは、車両が停止等しているほかの車両の前に、無理に進入（進路変更）することを指し、違反した場合は交通違反となり、罰則の対象となるとされています。

　また、初心運転者や高齢運転者に対する割り込みも、初心運転者等保護義務違反の観点から禁止されています。

※ ※ ※

　馬は非常にデリケートな生き物で、長時間の輸送のストレスにより「輸送熱」と呼ばれる体調不良を起こしてしまうケースもあると言われています。

　そんな馬をベストな状態で運ぶためにも、馬運車のドライバーも気を遣いながら運転しており、周りのドライバーも配慮してあげることが望ましいといえます。