2年目の新生「ラリージャパン」はどうだった? ラリー認知は拡大? 勇姿見せた勝田貴元選手が振り返る

2022年に12年ぶりの開催となった「ラリージャパン」。愛知県・岐阜県を舞台にした世界最高峰のラリー競技はどのようなカタチで行われたのでしょうか。また日本人ドライバーとなる勝田貴元選手に振り返ってもらいました。

ラリージャパン、2022年から2023年で何が変わった?

 2023年11月16日から19日にWRC最終戦となる「フォーラムエイト・ラリージャパン2023」が開催されました。
 
 競技区間となるSS(スペシャルステージ)は昨年よりも3つ増え22か所(合計距離は304.12km)、リエゾン(移動区間)を含めた総走行距離は958.95kmです。

2年連続開催となった「ラリージャパン」
2年連続開催となった「ラリージャパン」

 昨年の反省を活かし、今年は様々な部分にカイゼンが見られました。一番大きく変わったのは「コース設定」でしょう。

 日本の山間部の峠道を活用したSSは昨年から大きな変更はありませんでしたが、新たに豊田スタジアムを活用した「トヨタスタジアムSSS」、岡崎総合公園を活用した「オザザキ・シティSSS」を設定。

 ラリーは海外では馴染のあるモータースポーツですが、日本ではまだまだマイナーなのも事実です。

 それが故に、いきなり山間部でのSS観戦となるとハードルが高い人も多いです。

 そんな中、「多くの人にラリーを見てほしい」、「ラリーの面白さを解りやすく体験してほしい」と想いから生まれたステージです。

 中でも「トヨタスタジアムSSS」はミニ四駆のコースを彷彿させる特設コース(立体交差のジャンプスポットも用意)を2台同時スタート、普段のラリーでは見る事のできない“ガチンコ”バトルを、まるでショーのように観戦が可能になっていました。

 スタジアムの中で走るステージはアクロポリス(ギリシア)が有名ですが、今回の大盛況っぷりからすると、今後ラリージャパンの大きな特徴になるかもしれません。

 一方、「オカザキ・シティSSS」は東京ドーム40個以上敷地と起伏に富んだ地形を活かしたコース設定で、迫力ある走行を安全かつ身近に多くの人が観戦できるステージになっていました。

 これは昨年の観戦席(オカザキSS)がコースから遠い(=川の対岸)上に走行時の砂埃で車両の識別どころか何も見えないと言った数々の汚名を返上できたかなと思っています。

 どちらのSSSも大人数の動員を前提とした場所のため、アクセスのしすやすさはもちろん、移動同線や席の確保に加えてトイレや飲食など観戦時の困りごとに対する配慮もすぐれており、“ラリー観戦”の中では世界的に見ても整ったステージだったと思いました。

 また、山間部のSSは前半が林道コース、後半は狭い斜面に水田が重なる棚田と集落を背景にラリーカーが疾走する「レイク・ミカワコ」に、筆者は昨年に続き行きましたが、昨年よりも移動同線(シャトルバス乗降場所などを含めて)や観戦場所の設置などもシッカリしていたように感じました。

 この辺りは2年目でノウハウが構築された所もあるはず。
ただ、欲を言えば「もう少し近くで見られるといいのに」と思うような場所も。

 この辺りは主催者と土地所有者との交渉なので僕が偉そうにどうこう言える話ではありませんが、来年はどちらにとってもハッピーな案が生まれる事に期待したい所です。

 また、WRCのライブ映像も2年目と言うことで工夫が見られ、昨年WRC公式サイト上で行なわれた写真コンテストのファン投票1位だった旧伊勢神トンネル内に可動式のカメラの設置や、日本の風景の映し方が確実に上手になっているのも確認できました。

 細かい部分では、トヨタはサービスパークを含め昨年以上に水素発電を活用していることで、担当者は次のように話してくれました。

「昨年は“水素発電”というだけで注目され取材も多かったですが、今年は話題すら上がっていません。

 ただ、インフラは元々そういうモノですので、より身近になってきた証拠だと心の中では喜んでいます。

 ちなみに今年は昨年の2割増しでの供給に加えて、TGR-WRTのチームテント内の重要な箇所の電源も担っています。

 昨年は『本当に大丈夫か?』とあまり信頼されていませんでしたが、様々な取り組みや昨年の実績が理解、より本格的な起用となっています」

 更にこれはあまり表には出ていませんが、今回はトライアルながらヘリコプターの活用もスタートしています。

 日本では法律の壁(ドクターヘリと観光用はルールが異なり、同じ条件で離発着ができない)など課題が山積みですが、良いフィードバックが得られたので、今後の展開に注目したい所です。最初は富裕層向けだと思いますが、継続が大事です。

 このように、いい事ばかりだけでなく課題もいくつか。昨年は競技中にステージへの一般車両の侵入などが問題になったが、今年はオフィシャルカーのコース上停止により赤旗中断と言うあってはならない問題が発生。

 更にリエゾン区間の大渋滞によるスケジュールの遅延(渋滞で何度もストップ&ゴーを行なった結果、クラッチ破損でリタイヤした選手もいた)など、安全面や運営面での指摘がありました。

 2024年のラリージャパンは11月21-24日に決定しているので、次に向けて早急なカイゼンをお願いしたい所です。

TGR-WRTが母国日本の道での初優勝を1-2-3-5フィニッシ(Photo:TOYOTA GAZOO Racing)
TGR-WRTが母国日本の道での初優勝を1-2-3-5フィニッシ(Photo:TOYOTA GAZOO Racing)

 そんなラリージャパンですが、結果はトヨタの1-2-3位で幕を閉じました。

 ただ、1番の注目はと言うと、やはりWRCトップカテゴリーに参戦する唯一の日本人ドライバー・勝田貴元選手の頑張りだったと思います。

 勝田選手は2日目のSS2でクラッシュ、一時は33番手まで沈んだ順位を10回のステージでベストタイムを記録しながら追い上げ、総合5位を獲得。

 ちなみに今年のラリージャパンは雨も相まって路面状況は今年のWRCチャンピオンであるカッレ・ロバンペラ選手ですら「日本の道は本当に難しい」と言うくらいのコンディションの中での快走でした。

 ちなみにヤリ-マティ・ラトバラ代表に「今年のコンディションを、代表ではなくドライバーだったらどう感じますか?」と聞いてみたら、「選手権を争っていれば選択の余地はないのでどんなコース、どんなコンディションであっても全力で挑みますが、今は選べる権利があるので……今回は遠慮したいですね(笑)」と思わず言ってしまうほどの厳しさだそうです。

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