「昭和」感残る! 「レース生地のシートカバー」なぜ健在? 新型「アル/ヴェル」にも設定! いまだ支持される理由とは

昭和の頃のクルマでは比較的ポピュラーだったレース生地のシートカバーも近年はすっかり数を減らしていますが、2023年6月にフルモデルチェンジした新型「アルファード/ヴェルファイア」には、しっかり設定が残されています。どういった需要があるのでしょうか。

最新モデルに今も生き続ける“昭和”感! 「レース生地カバー」の不思議

 クルマに装着されるアクセサリーは、時代の流れや流行によって変化し、かつてはたくさんあったのに、気づけばほとんど見かけなくなったものも少なくありません。
 
 そんな懐かしいアクセサリーの筆頭とも言える「レース生地のシートカバー」を振り返ります。

もはや「懐かしい」! 2023年6月に発売されたトヨタ 新型「アルファード/ヴェルファイア」にも設定されたレース生地の「ハーフシートカバー」(7万3700円)
もはや「懐かしい」! 2023年6月に発売されたトヨタ 新型「アルファード/ヴェルファイア」にも設定されたレース生地の「ハーフシートカバー」(7万3700円)

 1990年代ごろまでは装着している車両を多く見かけたレースのシートカバーは、その名の通りレース生地で作られたシートカバーです。

 シートのヘッドレストから背もたれ部分の半分程度をカバーする、ハーフタイプが主流となっていました。

 その発祥は定かではありませんが、日本では古くから大切なものにレースのカバーをかけるという文化が浸透していたことと深く関わっていそうです。

 テレビや電話、鏡台からドアノブに至るまで、昭和の頃はさまざまなものにレースのカバーをかけていたことを覚えている人もいるかもしれません。

 そう考えると、家の次に高い買い物とも言われるクルマのシートにレースのカバーをかけてしまうのも、なんとなく理解できるところです。

 メーカーとしてもその文化を尊重して、ディーラーオプションなどでレースシートカバーを多く設定していたのでした。

 とはいえ、時代の流れと共にレースのシートカバーを装着するユーザーは減少し、現在ではタクシーやハイヤーなど、一部の車種を除いて装着している車両はほとんどないというのが現状です。

 その反面、根強い需要もあるようです。

 2022年、従来のイメージを大幅に変更しフルモデルチェンジしたトヨタ「クラウンクロスオーバー」や、2023年6月に登場したばかりの新型「アルファード/ヴェルファイア」には、いまだにレース生地の純正ハーフシートカバーのオプション設定がなされています。

 ちなみに新型アルファード/ヴェルファイアの純正アクセサリーは、1台分で7万3700円となかなかの高級品です。

 比較的簡単に着脱が可能で洗濯ができるシートカバーは清潔な状態を保ちやすく、純白のレースの清潔感も相まってクリーンな印象を与えやすいという点が、タクシーやハイヤーなどの法人ユーザーから重宝されているからと思われます。

 ただ最近は、車内の雰囲気を一変することができる、異なるカラーやレザー調などのフルカバータイプのシートカバーが一般ユーザーから人気となっているため、一部の車種以外にはレースのシートカバーの設定がなくなっているようです。

 過去には、多くの車種をカバーする「汎用シートカバー」なども販売されていました。

 しかし近年の車両は、シートに内蔵されたSRSサイドエアバッグを標準装備している車種も珍しくなく、その展開を考慮した専用シートカバーが求められるため、気軽に装着できなくなりつつあるのも、汎用品が減ってしまった要因といえるでしょう。

 実際、新型アルファード/ヴェルファイアの純正シートカバーも、同モデルに標準装備されるSRSサイドエアバッグ対応の製品となっています。

 アクセサリーカタログにも「車種専用の純正用品以外を使用するとSRSサイドエアバッグが正常に作動しなくなり、重大な傷害を受ける恐れがあります」との一文を見ることができます。

※ ※ ※

 このように、今では一部の車両でしか見ることができなくなったレースのシートカバー。

 とはいえ、一部の旧車ユーザーの間では、あえて当時を感じさせるレースシートカバーを装着し「昭和感」を演出する、といった楽しみ方をしている層もあるよう。

 当時物のレースシートカバーが、思わぬ高値で取引されるケースもあるとのことです。

 今ではすっかり見る機会の減ってしまったレースのシートカバーですが、レトロな雰囲気を味わいたいときはあえてチョイスしてみるのも面白いかもしれませんね。設定があれば、ですが。

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Writer: 小鮒康一

1979年5月22日生まれ、群馬県出身。某大手自動車関連企業を退社後になりゆきでフリーランスライターに転向という異色の経歴の持ち主。中古車販売店に勤務していた経験も活かし、国産旧車を中心にマニアックな視点での記事を得意とする。現行車へのチェックも欠かさず活動中。

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