大雪「立ち往生」で活躍! 雪道進む自衛隊のハコ型車両が凄い! 冬季に存在感示す「10式雪上車」とは

縁の下の力持ち「10式雪上車」とはどんな特徴ある?

 自衛隊の雪上車を製造しているのが新潟県の大原鉄工所です。

 初の国産雪上車を開発した独自技術を持っており、自衛隊発足以来ずっと雪上車を製造、納入してきた実績があります。

 またより厳しい環境の南極で使われている雪上車も大原鉄工所製で、自衛隊用の国産雪上車の歴史は古く、自衛隊の前身である保安隊時代の1952年から開発が始まっています。戦後初の国産戦車61式の開発開始1955年より早いのです。

 現在配備が進んでいる10式雪上車と先代の78式雪上車はよく似ていますがだいぶ変わっています。

 まず78式の操縦は特別な訓練が必要でした。操縦には転把(てんぱ)と呼ばれる左右二本レバーを操作して、曲がりたい方向のレバーを引いて履帯を一時停止させて旋回させる方式で、しかも5速マニュアルトランスミッションという一昔前の重機と同じ構造で操縦には習熟が必要でした。

 操縦席には2本の転把と脇には変速機レバー、足元にはアクセル、ブレーキ、クラッチという3本のペダルが並んでおり、オートマチックトランスミッションとパワステに慣れた人には、2本の脚と腕でどうやって操縦するのか戸惑うことでしょう。

 それが10式では転把をハンドルにし、トランスミッションも4速オートマチックとなりずっと操縦がやりやすくなりました。

 また先に紹介したように雪上車は雪のないところでは長く走れませんので、長距離移動には輸送車で運んでもらう必要があります。

 78式は大きくて戦車や装甲車と同じように大型トレーラーでないと載せられませんでしたが、10式はややコンパクトになって73式大型トラックに載せられます。

 大型トレーラーより73式大型トラックのほうが数は多いですので、ずっと使い勝手がよくなりました。ただし車体が小さくなった分定員は2名減って、乗員2名+乗車10名です。

78式雪上車の操縦席、トラックというより重機に近い運転装置(撮影:月刊PANZER編集部)
78式雪上車の操縦席、トラックというより重機に近い運転装置(撮影:月刊PANZER編集部)

 自衛隊の雪上車は雪が降ったら大忙しです。トラックやジープのような輸送や連絡任務から、演習では指揮官を載せて指揮車にもなります。

 実戦では指揮官も戦車や装甲車に載ることが多いのですが、実動よりも指揮能力の向上が目的の訓練の場合は動きやすい雪上車が「指揮戦車」を演じることもあります。

 また北国勤務の隊員はスキー技能は必須で、ジープから戦車まで必ずといってよいほど乗員用のスキー板が括り付けられています。

 雪上車でスキーを履いた多くの隊員を引っ張って移動することもよくおこわれます。

 ただ引っぱられて「ドナドナ」されるのは楽そうですが、踏ん張ってバランスを取らなくてはならないのでそれほど楽でもなく、転ぼうものなら後続が巻きこまれて大変なことになるそうです。

 自衛隊の雪上車は目立ちませんが雪国には不可欠な存在で、縁の下の力持ちとして活動を支えています。同期の10式戦車と同じ位重要な装備品なのです。

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