中国車への「忖度」措置じゃない! 意外に知らない制度? BYDが選んだ認証方法「PHP」とはなんなのか

中国メーカーとして初のPHPを用いたBYD

 BYDもPHPを用いて日本でアット3を販売するので、例に漏れずほかのPHP車と同じ条件を踏むこととなります。

 PHPでは、TDSで必須となる国土交通省の「サンプル車審査」「製品均一性の確保体制の審査」が省かれ、2ヶ月かかる申請プロセスが1ヶ月ほどの書類審査で完了します。

 その後、実際に販売される個体に対する完成検査もPHPでは不要となり、最後に現車提示と書類の提出だけでその個体が公道を走行するために必要な新規検査が完了。

 これはBYDだけが許された特権ではなく、多くの輸入車ブランドが用いている認証方法となります。

2023年1月に発売されるBYD「ATTO3(アット3)」
2023年1月に発売されるBYD「ATTO3(アット3)」

 ちなみに、「販売台数年間5000台以下」を条件に許可されたその車種が年間5000台を超えてしまう場合は、再度、通常のTDSで型式を取得する必要があります。

 この上限台数は、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉の場において上限台数の引き上げについて触れられたことや、欧州車で上限近くまで販売された自動車が存在したことなどを踏まえて、2013年に年間2000台から5000台に引き上げられました。

 また「型式の指定」というのはひとつの車種に限るものなので、例えば型式の変更が必要なほど差異のあるアット3の別モデルや、ドルフィン、シールといった別車種の型式では、それぞれ別々の申請が必要となります。

「年間5000台」というのはメーカー全体ではなく、ひとつの型式(簡単に言えば車種)における上限なのです。

 この手法を用いて、日本にて乗用車を販売する中国メーカーはBYDが初となります。

 今後もNIOなどの多くの中国メーカーが日本への参入を目論んでおり、それらメーカーも同様の手法を用いて型式を取得することになるでしょう。

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Writer: 中国車研究家 加藤ヒロト

下関生まれ、横浜在住。2017年に初めて訪中した際に中国車の面白さに感動、情報を集めるうちに自ら発信するようになる。現在は慶應義塾大学環境情報学部にて学ぶかたわら、雑誌やウェブへの寄稿のみならず、同人誌「中国自動車ガイドブック」も年2回ほど頒布する。愛車は98年式トヨタ カレン、86年式トヨタ カリーナED、そして並行輸入の13年式MG6 GT。

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