新型「戦車」の開発期間はクルマ以上? ライバル不在の「90式戦車」とはなんだったのか
地上戦の要となる戦車。クルマの研究開発と同じく、世界中のライバルと追いつけ追い越せ競争で性能、品質向上させて進歩しています。そうしたなかで、登場した際にライバル不在の戦車が存在しました。それはどのような状況だったのでしょうか。
生まれてみればライバルがいなくなっていた90式戦車
クルマの研究開発は世界中のライバルと追いつけ追い越せ競争で性能、品質向上させて進歩しています。
これは戦車も同様ですが、登場した際にライバル不在の戦車が存在しました。それはどのような状況だったのでしょうか。
日本は戦後61式戦車、74式戦車、90式戦車、10式戦車を国産してきましたが、3代目の90式は国際環境が激変した時期に生まれました。
戦後の自衛隊は東西冷戦という国際環境下で常にソ連軍を意識して備えてきました。
61式も74式のソ連の戦車がライバルで、90式戦車も日本に上陸してきたT-72というソ連軍戦車に対抗するというコンセプトで開発されています。
90式戦車が完成制式化されたのは1990(平成2)年のことですが、翌1991(平成3)年にはソ連は崩壊して東西冷戦は終結。
T-72が日本に上陸してくる可能性はほぼゼロとなり、90式が生まれてみればライバルはいなくなっていたわけです。
戦車は開発から生産にこぎ付けるまで長い時間がかかります。設計着手段階で完成した時代を予想するのは「賭け」に近いものとさえいわれます。
90式の場合は「賭け」は外れてしまったといえるかもしれませんが、東西冷戦の終結により平和な時代が訪れると思えば悪いことではありません。
クルマの新車開発にも数年かかり、未来を読まなければならないのは同じです。
スズキ公式サイトの「スズキこどもの質問箱」には「新車開発にかかる時間は?」という質問があり、下記のように記載されています。
「全く新しい自動車を企画してから工場で生産されるまでには、およそ3年くらいかかっていました。
最近では技術(ぎじゅつ)が進んで、開発期間はどんどん短くなってきていますが、新しい自動車を開発するときにはその開発期間の長さを考え、少なくとも5~10年先を考えて開発しています」
クルマの新車開発においても将来を予測する「賭け」の要素が多いことが分かります。
90式の開発が始まった1977(昭和52)年は冷戦期でありソ連軍の戦車が北海道に上陸することが真面目に脅威とされていました。
現実には極東ソ連軍には日本に十分な数の戦車を上陸させられるだけの輸送力は無かったのですが緊張感は高く、「ソ連軍北海道上陸!」なんて仮想戦記物が出た世相でした。
当時ソ連は125mm滑腔砲を備えたT-72の生産配備を始めており、陸上自衛隊主力の74式戦車の105mm砲では力不足とされ、T-72に対抗できる新戦車の開発が急務とされていたのです。
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