水素で走る「電動アシスト自転車」なぜ誕生? 30秒充填で100km行ける! 小型燃料電池の可能性とは

30秒以内で満充填、航続距離は100km

 燃料電池電動アシスト自転車は、燃料電池スタックと水素タンク、さらにリチウムイオン電池と制御基板が、自転車後部の箱のなかにすっぽりと収まっています。

 現在、この燃料電池電動アシスト自転車は試験的に3台が製造されました。

自転車後部に搭載された燃料電池スタックと水素タンク
自転車後部に搭載された燃料電池スタックと水素タンク

 国内初となる燃料電池電動アシスト自転車を使ったビジネスとして、シェアサイクル事業者との連携を検討しているといいます。

 シェアサイクルの場合、電動アシストが可能な距離が長いことが、利用者の直接的なメリットとしてわかりやすいという点に着目。さらに、電動バイクの場合、利用者や事業者が電池をこまめに移動したり、充電に数時間を要するといった手間がかかりますが、燃料電池の場合は「水素タンクへの充填時間は30秒以内で、満充填での航続距離は100kmほど」という利便性の高さが特徴です。

 充填する圧力は35MPaに抑えており、これは「量産型燃料電池車のように70MPaを採用するとタンクの重量が重くなるため」として軽量化と利便性のバランスを考えた結果だといいます。

 また、電動アシスト自転車用と同じ、燃料電池システムを使った非常用電源も山梨県内で開発しており、今回は展示がありませんでしたがパネルで製品を紹介していました。

 今後については「電動の車いすやドローン、また運送事業者が使う小型配送車などでの利用、さらには欧州の電動アシスト自転車市場での事業展開も視野に入れている」として、さまざまな可能性を模索しているといいます。

 吉積教授は「(現時点で)燃料電池事業のピラミッドの頂点は、大量生産型の燃料電池車ですが、(中小企業などでも)電動アシスト自転車など、まずできることから始めて、燃料電池事業を下支えすることが重要だと思います」と、山梨の仲間たちが未来に向けた期待を高めています。

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Writer: 桃田健史

ジャーナリスト。量産車の研究開発、自動車競技など、自動車産業界にこれまで約40年間かかわる。
IT、環境分野を含めて、世界各地で定常的に取材を続ける。
経済メディア、自動車系メディアでの各種連載、テレビやネットでの社会情勢についての解説、自動車レース番組の解説など。

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