トヨタ「GRヤリス2人乗り仕様」登場!? なぜ「ひっそり」発売? 「存在することが大事」なレアグレードとは
トヨタ「GRヤリス」には、2022年4月15日に追加された「RSライトパッケージ」、6月3日に追加された「RCライトパッケージ」という異なるライトパッケージが存在します。ひっそりと発売されたこれらにはどのような特徴があるのでしょうか。
ひっそりと発売されたGRヤリスのライトパッケージとは
トヨタ「GRヤリス」には、こっそり追加されたレアグレードが存在します。
ひとつが2022年4月15日に追加された「RSライトパッケージ」、もうひとつは2022年6月3日に追加された「RCライトパッケージ」です。
それぞれどのような仕様なのでしょうか。
RSは直列3気筒1.5リッターNA+CVTを搭載したFFモデルになります。位置づけ的にはGRヤリスの「本気」を「気軽」に味わう事ができるモデルですが、このモデルを使ってモータースポーツに参加する人も多いと聞きます。そこでネックになるのは「車両重量」です。
RSの車両重量は1150kgで同じエンジンを搭載するヤリス(Xグレード)と比べると160kgの重量差があります。
当然、RSのほうがコーナリング性能は高いですが、動力性能は。とくにラリーは低速&タイトなコーナーが多いので、重量は加速時に大きく影響します。
「もっと軽くできたら戦闘力上がるのに……」そんな声に応えて追加されたのが、RSライトパッケージというわけです。
RSに対して、ホイールの変更(エンケイ製鋳造→BBS製鍛造)とスタビライザーの非装着で20kg軽量化、車両重量は1130kgです。
「スタビライザーを外してハンドリングは大丈夫?」という声もありそうですが、そもそも競技に使うときにはサスペンションを含めて社外品に交換するので問題ないという事なのでしょう(もちろん日常走行は問題なし)。
ちなみにカーボンルーフはフイルム→マーブル柄に変更されていますが、これは軽量化というよりも見た目の差別化でしょう。
「たかが20kg」と思われがちですが、RSのエンジンは120ps/145Nmとそれほど高出力ではないため、この軽さは大きな武器になるのはいうまでもありません。価格はRSの265万円に対して312.4万となっています。
もうひとつは「RCライトパッケージ」です。RCはモータースポーツ向けのベースグレードですが、ライトパッケージはより先鋭化された仕様となっていますが、その内容はかなりぶっ飛んでいます。
まず乗車定員を4名→2名に変更したうえで、リアクォーターガラス/バックドアガラス、リアスポイラーガーニッシュ/バックドアガーニッシュを軽量品へと変更。
さらにサイレンサーレスパッケージ、軽量フロントシート、バックドアダンパーレスなど、走りに必要ない物は容赦なく取り外されています。
極めつけは「塗装レス」が標準で、オプションで電着塗装(錆止め塗装)レスも可能です。
開発責任者の齋藤尚彦氏は「競技車両を製作する際に一度塗装を剥がして作業を行なうのですが、それならば塗装がない状態で提供してあげたほうがいいのでは……と考えました」と語っています。
その結果、車両重量はRCの1250kgに対して80kg軽量の1170kgとなっています。
一方で、エンジンルーム冷却ダクト、液式軽量バッテリーの装着、オイルクーラーセット(エンジン/トランスファー/リアデフ)や8.5J×18アルミホイール(18インチパッケージ)のオプション設定も用意。
価格はRCの330万円に対して442万円となっています。「パーツを外したのに、なぜ高いのか?」というお叱りの声も聞きますが「軽量パーツを新規開発したため、高くなってしまいました。たぶん怒られるだろうな……と予想していましたが」(齋藤氏)
そもそも、なぜライトパッケージを追加したのでしょうか。それは「モータースポーツで勝つ」というこだわりのためです。
モータースポーツはカテゴリーによってさまざまなレギュレーションがあります。
そのなかに最低重量と言う項目がありますが、その内容を見ると「同一車両型式に複数の車両重量が設定されている場合は、その最小値を当該車両の車両重量として適用する」とあります。
ちなみにRCライトパッケージにオプション設定される8.5J×18アルミホイールも同様で「装着するホイールは、同一車両型式のカタログに記載されているホイールの直径、および幅がカタログに記載される数値を最大値とすることができる」とあり、そのホイールが使えるとより太いタイヤの使用が可能です(従来の8.0Jは245まで、8.5Jは255が使える)。
つまり、RS/RCライトパッケージが存在することで、現在モータースポーツに参戦するGRヤリスユーザーが恩恵を受けることができるのです。
要するに、この2台は多く売れることが目的ではなく、存在することが大事なグレードなのです。
大人気ないと思う人もいますが、ルールがある以上は「勝つためには、やれることは全てやる」という考えなのです。
齋藤氏は次のように語っています。
「かつて、スバルインプレッサWRXや三菱ランサーエボリューションが似たような手法で性能アップをしていましたが、当時のトヨタはそれができませんでした。
でも、今は違います。このようなことができるようなトヨタになった……ということの証明です」
※ ※ ※
ちなみにこの2台はGRヤリスのサイトにはまったく出ておらず、サイト下部にある「Webカタログ」をクリックした先の「簡易版カタログ」のなかに記載されています。まさにレア中のレアグレードといっていいでしょう。
Writer: 山本シンヤ
自動車メーカー商品企画、チューニングメーカー開発を経て、自動車メディアの世界に転職。2013年に独立し、「造り手」と「使い手」の両方の想いを伝えるために「自動車研究家」を名乗って活動中。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。
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