マン島TTレースで見た、走りながらTTレースの安全な運営を担う「トラベリング・マーシャル」の存在

現存する世界最古のオートバイのレース、「マン島TTレース(Isle of Man TT Races)」は、今も昔も変わらず公道を閉鎖し「公道レース」として行なわれますが、TTレースに欠かせないのが「トラベリング・マーシャル」の存在です。

ただ者ではない!? マン島TTレースに欠かせない存在

 2022年に3年ぶりの開催となった「マン島TTレース(Isle of Man TT Races)」ですが、今も昔も変わらず公道を閉鎖し「公道レース」として行なわれます。このTTレースに欠かせないのが「トラベリング・マーシャル」の存在です。

【画像】マン島TTレース「トラベリング・マーシャル」の活動詳細を見る(32枚)

出動の連絡を無線で受け、待機場所のパーラメント・スクエアからコースインするトラベリング・マーシャル(写真/小林ゆき)
出動の連絡を無線で受け、待機場所のパーラメント・スクエアからコースインするトラベリング・マーシャル(写真/小林ゆき)

 トラベリング・マーシャルとは、走行前にコースの安全を確認したり、天候その他の理由でコースのコンディションが変わったときに確認したり、また事故が起こったときに迅速にレスキュー活動を行なうライダーのことです。

 すべてのバイクには応急救護のための機器が備えられ、負傷者の救護をサポートします。また、転倒したコース上のマシンのオイル漏れやパーツの破損など不具合がないか確認したり、セクター・マーシャル(コースに配置されているマーシャル=日本で言うところのフラッグ・オフィシャル)やオフィシャル本部に無線機などで報告したりする業務を担っています。

プラクティスの合間にコースコンディションを確認するため走るトラベリング・マーシャル。スピードも求められるため、TTレースやマンクス・グランプリで実績のある地元ライダーから選出される。アライヘルメットやRSTの革ツナギなどのギアが支給される(写真/小林ゆき)
プラクティスの合間にコースコンディションを確認するため走るトラベリング・マーシャル。スピードも求められるため、TTレースやマンクス・グランプリで実績のある地元ライダーから選出される。アライヘルメットやRSTの革ツナギなどのギアが支給される(写真/小林ゆき)

 そのポジションに付けるのは、TTレースまたはマンクス・グランプリ(TTレースと同じTTマウンテンコースを使うレースイベントで、TTの登竜門的位置にあるレース)のどちらかに出場したことがある、経験豊富なマン島在住のライダーが任命されます。

 今年は7人のトラベリング・マーシャルが活動していて、トラベリング・マーシャル、ナンバー1のトニー・ダンカン氏はマンクス・グランプリで2回の優勝経験があります。ナンバー2のジム・ハンター氏と3のポール・コリン氏も同マンクス・グランプリで優勝1回など実績十分なライダーばかりです。

ジャンプすることで有名なバラフブリッジで、トラベリング・マーシャルもジャンプ。写真は2019年(写真/小林ゆき)
ジャンプすることで有名なバラフブリッジで、トラベリング・マーシャルもジャンプ。写真は2019年(写真/小林ゆき)

 その活動はTTやマンクス・グランプリのレースウィークだけではありません。各トラベリング・マーシャルにはバイクが供与され、日々バイクで走りながらTTコースの安全を確認したり、次のレースイベントに向けて安全施策をどう対策するか検討するなど、一年を通じて活動しています。

写真は2012年のクレッグニバーにて、プラクティス時にラップタイムが遅いサイドカーを先導するトラベリング・マーシャル(写真/小林ゆき)
写真は2012年のクレッグニバーにて、プラクティス時にラップタイムが遅いサイドカーを先導するトラベリング・マーシャル(写真/小林ゆき)

 トラベリング・マーシャルの歴史は古く、最初にTTレースで活動したのは1935年のことでした。

 プロモーション的にメーカーからバイクの貸与を受けることが多く、初期はNew Imperial、ノートン、アリエル、AJS、ベロセット、トライアンフ、マチレス、BSAなどイギリスのメーカーが採用されていました。

 1970年代のバイク市場は世界的に日本車が台頭するようになり、1977年のTTで初めてホンダ車がトラベリング・マーシャル用バイクとして採用され、2007年までずっとホンダ車が使われました。その変遷を羅列すると次のとおりです。

「CBX1000」
「CX500」
「CB900」
「CB1100F」
「VF750」
「CBX550」
「VFR750」
「CBR1000F」
「CBX750F」
「CBR1000」
「Pan Europeans」
「VFR750」
「RC45」
「CBR900R」
「CBR1100XX」
「VTR1000」
「CBR600RR」

 そして2008年のTTではヤマハ「YZF-R1」が採用され、2010年にはスズキ参戦50周年ということで「GSX-R1000R」が採用されました。

スズキのマン島TTレース参戦50周年の2010年は「GSX-R1000R」がマーシャル・バイクに採用された(写真/小林ゆき)
スズキのマン島TTレース参戦50周年の2010年は「GSX-R1000R」がマーシャル・バイクに採用された(写真/小林ゆき)

 今年はホンダ「CBR Fireblade」シリーズの30周年にあたり、これを記念してホンダは「SP」モデルを含む9台のホンダ「CBR1000RR-R Fireblade」をトラベリング・マーシャルに提供しています。これには30周年記念のカラーリングを施したモデルも含まれます。例年、同じカラーリングのマシンで揃えることが通例になっているので、別々のカラーリングが走るのは異例のことです。

走行終了後にフラッグ・マーシャルに挨拶をしながら走るトラベリング・マーシャル。写真はグースネック・コーナー(写真/小林ゆき)
走行終了後にフラッグ・マーシャルに挨拶をしながら走るトラベリング・マーシャル。写真はグースネック・コーナー(写真/小林ゆき)

 ホンダUKのモーターサイクル部門責任者であるニール・フレッチャー氏は「この伝説的な舞台で、マーシャル・バイクとして活躍するFirebladeを再び見ることができるのは、素晴らしいことだと思います。マン島TTは、半世紀以上にわたってホンダのDNAを受け継ぎ、ホンダのモーターサイクルを形成する上で大きな役割を担ってきました。トラベリング・マーシャルは、TTを可能な限り安全に運営するために素晴らしいサービスを提供しており、今回も彼らをサポートできることを嬉しく思っています。また、Firebladeは30周年を迎え、特別なものになるでしょう」と、コメントしています。

提供:バイクのニュース


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