なぜ大黒ふ頭に「ナンバー無し車」放置? 軽から高級車まで無惨な状況も! 長期間放置される理由とは

よく見れば…「車台番号削られた盗難車?」らしきクルマも

 船積みを待つ正規の方法で輸出されるクルマが大半ではありますが、なかにはどう見ても「輸出される中古車には見えない」クルマもちらほら置かれています。

 タイヤ&ホイールがなかったり、クルマのなかがゴミだらけで窓が割られていたり、ぶつかって凹んだ状態のままで放置されていたり。

 これらの(おそらく)不法投棄されたクルマたちは、筆者(加藤久美子)が知る限り1-2年間は少なくとも動かされた形跡がありません。

 なかには「盗難車かも?」と思われるクルマもあり、それらに共通するのは「車台番号」が削られていることです。

 車台番号とはナンバープレートの数字ではなく所有者が変わっても、住所が変わっても絶対に変わることがないクルマの「戸籍」のようなもので別名「フレームナンバー」ともいわれます。

 車検証にも記載されている番号で1台にひとつ異なった記号+番号を自動車メーカーが製造時に打刻します。

 主にクルマの骨格にあたる部分に打刻されていますが、外国車のなかには比較的確認しやすい場所にコーションプレートと共に貼り付けられている場合もあります。

 この車台番号を削ったり、改ざんしたりすることは道路運送車両法違反になります。

 そもそも「車台番号が削られている=まともな履歴のクルマではない」ということになります。

「金融車(担保対象となるクルマ)」であっても、正規のルートで流通しているなら車台番号が削られることはありません。

 大黒ふ頭には確認できただけで3-4台の車台番号が削られたクルマがありました。これらは盗難されたか、犯罪に関わったクルマである可能性が高いといえるでしょう。

大黒ふ頭の道端でクルマを修理中の外国人に遭遇(撮影:加藤博人)
大黒ふ頭の道端でクルマを修理中の外国人に遭遇(撮影:加藤博人)

 また、ナンバーがない&車体番号が削られているクルマは、盗難されたクルマである可能性以外に「盗難車のダミー車両」の可能性もゼロとはいえません。

 ダミー車両の存在は2018年に横浜税関が公開した「不正輸出の手口」でも明らかになっています。

 どのような手口かというと、日本で盗んだ高級車を完成車の形で輸出する際、そのままでは当然、盗難車であることがバレてしまいます。

 そこで、オークションで仕入れた激安国産車を輸出する形で通関などの手続きをおこないコンテナに積み(シールは未封)、船積みする直前に港近くのヤードなどでコンテナに入ったダミー車両と盗難高級車を入れ替えて封印します。

 その後、コンテナから降ろされたダミー車両は解体処分されますが、輸出中古車に詳しい事情通の話によると「すべてが解体されるとは限らない」とのこと。

「大黒ふ頭に限らず、海外へ輸出される船が出るふ頭にはナンバーのない激安国産中古車が随所に存在します。

 このなかには不要となり車台番号を削り取られたダミー車両が混ざっている可能性もあるでしょう。

 解体にも手間と費用が掛かりますし、途中で発覚して窃盗団が逮捕されるとそれらのクルマは行き場を失うことになります。

 車台番号が削られていると履歴を追うことは難しくなりますし、警察もいちいちダミー車両まで細かく調べることはないでしょう」

※ ※ ※

 大黒埠頭のなかに置かれているナンバープレートのないクルマたちは、正規に輸出される以外、何らかの不正や犯罪に関わって行き場を失ってしまったケースもありそうです。

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Writer: 加藤久美子

山口県生まれ。学生時代は某トヨタディーラーで納車引取のバイトに明け暮れ運転技術と洗車技術を磨く。日刊自動車新聞社に入社後は自動車年鑑、輸入車ガイドブックなどの編集に携わる。その後フリーランスへ。公認チャイルドシート指導員として、車と子供の安全に関する啓発活動も行う。

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2件のコメント

  1. 20年くらい前、ナンバーを外された車が会社の敷地に放置されたことがあり、警察に調べてもらったのですが、車体番号から分かったのは鉄屑屋から買っていった人とのこと。結局は個人が特定できず会社が自腹で処分。今はリサイクル法などで最終処分業者まで追跡できるのか。処分を最終処分業者が取るのか知りたいですねぇ。記事よろしく。

  2. マイナンバーでポイントばら撒くのも良いけれど
    毎年そして毎車検時に高い税金をふんだくるんだから
    もう少し自動車の所有者追跡システムを確立してはどうだ

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