スバル「水平対向」なぜ採用? 世界的にマイナーな選択、そのワケ

苦渋の「サンバー」 その代わりにスバルが得たもの

 かつてスバルは水平対向エンジンのほか、一般的な直列4気筒エンジンも生産していました。軽自動車用です。ところが規模の小さいメーカーであるため、乗用車と軽自動車の両方を開発・生産するのは正直なところ辛かったようで、1980〜2000年代までのスバルはあまり儲かっているとはいえませんでした。

 そこでスバルは2012年に軽自動車を諦めて、水平対向エンジンの普通車へ集中することにします。スバルの原点は、軽自動車の「スバル360」や1961(昭和36)年発売の軽商用車「サンバー」ですから、それを諦めるのは、まさに苦渋の決断だったことでしょう。そして、スバルで販売する軽自動車はダイハツからのOEMに切り替えられました。いまの「サンバー」はダイハツ製なんですね。

 しかし、その選択と集中が功を奏します。2011年に439億5900万円だったスバルの営業利益は、2012年に1204億1100万円、2013年に3264億8900万円、2014年は4230億4500万円と飛躍的に伸びました。大きな理由は北米市場における販売の好調さですが、これをもたらした根底には、やはりスバルの「選択と集中」という経営判断があるでしょう。

 そして2016年5月12日、スバルは水平対向エンジン50周年へあわせるかのように、社名を2017年度より「富士重工業」から「スバル」へ変更すると発表しました。「スバル」は「富士重工業株式会社」の自動車製造部門におけるブランドです。

「富士重工業」の名は、会社創立の1953(昭和28)年より使用していた由緒あるもの。それをすっぱりと切り替える思い切りの良さ、それこそが現在、スバルが好調な理由ではないでしょうか。

【了】
提供:乗りものニュース

Writer: 鈴木ケンイチ

1966年生まれ。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。自動車専門誌を中心に一般誌やインターネット媒体などで執筆活動を行う。特にインタビューを得意とし、ユーザーやショップ・スタッフ、開発者などへの取材を数多く経験。モータースポーツは自身が楽しむ“遊び”として、ナンバー付きや耐久など草レースを中心に積極的に参加。見えにくい、エンジニアリングやコンセプト、魅力などを、分かりやすく説明するように、日々努力している。最近は新技術や環境関係に注目。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。

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