「荷台に人が乗って走破OK!」ただの「トラック」じゃない! 自衛隊の「3トン半」は「物資だけじゃなく安心」も運ぶスゴいヤツ!

災害時などに派遣される自衛隊。そのなかでも物資の輸送に用いられるのが通称「3トン半」と呼ばれるトラックです。一見ただのトラックに見えますが、実はスゴいやつでした。

物資だけじゃない「安心」も運ぶ通称「3トン半」とは

 コンビニに毎日商品があり便利に利用できるは、絶え間なく商品が運ばれてくるからですが、ミリタリーの世界でも「運ぶ」ということは大変重要です。

 いくら高性能な戦車でも燃料や弾など物流が無ければ役に立ちません。

 作戦の基本は「運ぶ」ことから始まるといっても過言ではありません。

2011年3月13日東日本大震災の津波で浸水した地域を走行する3 1/2tトラック(画像:防衛省統合幕僚監部)
2011年3月13日東日本大震災の津波で浸水した地域を走行する3 1/2tトラック(画像:防衛省統合幕僚監部)

 自衛隊は必要なものはすべて自分で用意して運ぶ能力を持っているので物流の途絶えた被災地にも駆け付けて活動できるのです。

 軍が警察や消防組織と大きく違うのがこの自己完結力で、それを支えているのがトラックです。

 平時でも公道で多く見かける自衛隊の車両といえばオリーブドラブに塗装された大型トラックではないでしょうか。地味ながら無くてはならないワークホースです。

 自衛隊では「大トラ」とか「3t半(さんとんはん)」とか呼ばれていますが、正式名称は「3 1/2tトラック」といいます。

 この「3 1/2t」という表記は見慣れませんが悪路走行時や慎重な取り扱いを要する物品などを扱う場合の標準積載量が3.5tであることに由来しています。舗装された路上走行であれば最大積載量は6tとなっています。

 自衛隊のトラックは外見が厳ついだけで、商用トラックとあまり変わらないように思えますが、計り知れない底力を秘めており、東日本大震災でその底力を示しました。

 発災時自衛隊の駐屯地でも多くの車両が津波で水没しましたが、3 1/2tトラックはすぐに動かすことができたのです。

 また「トモダチ作戦」復旧支援で派遣されたアメリカ軍の車両は津波で海水の混じった泥濘地を走り回って、すぐに部品に錆が発生したのに、自衛隊のトラックにはほとんど錆が見られずアメリカ軍関係者を驚かせました。

 戦車や戦闘機などは有事に最大限性能を発揮する為、燃費や騒音には目をつぶることもありますが、トラックのような車両は有事と平時の両方で力が発揮できる性能のバランスが求められます。

 日本の環境はトラックにとっては実は世界的にみても厳しいのです。

 市街地では渋滞でノロノロ運転や小まめな発進、停止が繰り返される一方で、高速道路でも巡航できることが要求され、燃費が良く、環境に配慮し速度、騒音、排ガスなど規制をクリアしなければなりません。

 一方でミリタリースペックでは泥濘地の走破性や荷台に人を載せるという商用トラックでは考えられない仕様も要求されます。

 メーカーであるいすゞ自動車では難しい要求をクリアする為、研究・設計期間は商用トラックの約3倍必要だったといいます。

 商用トラックは荷台に人を載せて公道を走ることは原則禁じられていますが、3 1/2tトラックの最大定員は22名となっているように荷台に人を載せて公道を走ることが認められています。これは自衛隊法が根拠になっています。

 自衛隊法第114条に「道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)の規定は、自衛隊の使用する自動車のうち、政令で定めるものについては、適用しない」となっており、防衛大臣が定める防衛省・自衛隊独自の保安基準や整備・検査をクリアしていれば公道走行が認められます。これにより荷台に人を載せることも可能になっています。

 法的には問題ありませんが、メーカーは荷台の乗り心地という商用トラックではありえない難題に頭を悩ませます。

 商用トラックではサスペンションは積載物の荷重を強く支えられればよいのですが、人が乗るからには衝撃を抑える必要もあります。

 振動を抑えつつ荷重にも耐えるということで3 1/2tトラックのリアサスペンションは板バネが2重構造でトラニオンサスペンションになっています。

 それでも荷台の座席は木製板張り折り畳み式の簡易的なものですので、お世辞にも乗り心地が良いとはいえません。

 演習場の未舗装路を走れば上下に飛び跳ねますので、お尻を守るクッション代わりに雨衣(レインコート)を下に敷いたりします。

 幌を掛けていても埃は舞い込んで来ますし、冬は寒く夏は暑いです。

 外の視界も後ろしかなく昼間でも薄暗いです。それでも慣れてくると居眠りできるといいますから訓練の賜物でしょうか。

 運転には大型免許のほか、初級装輪操縦という自衛隊内の資格が必要になります。

「自衛隊に入れば大型免許が取れる」と募集アピールにも使われますが、隊内で大型免許が取得できる公安委員会指定の自動車教習所があり、教習車にはこの3 1/2tトラックが使われています。

 現在使われている3 1/2tトラックは6速AT、パワーステアリングでコツさえつかめば運転もしやすいそうです。

 陸上自衛隊員の多くが一度ならずお世話になり見慣れたトラックですが、災害派遣で被災地に自衛隊のトラックが来ると、被災者は助けが来たことを実感して「本当に安心した」という声も多く聞かれます。

 物資だけでなく安心も届けるトラックでもあるのです。

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1件のコメント

  1. 自衛隊法第114条の規定は、車検や定期点検に関する法律で、自衛隊のトラックが荷台に人を載せて走行出来るのは、道路運送車両法の規定に基づいていますのでお間違え無い様にお願いします。