アドベンチャーバイクに新風味登場!? ハスクバーナ「ノーデン901」は旅とプレミアム感を醸しつつオフロードも抜かりなし
スウェーデン発祥のバイクメーカー「ハスクバーナ」から、メーカー史上初となるアドベンチャーモデル「ノーデン901」が登場、2022年3月より日本でも発売が開始されました。いったいどのような走りなのでしょうか? 試乗しました。
独特の存在感を放つ、ハスクバーナ史上初のアドベンチャーバイクとは?
イタリア、ミラノで開催されるモーターサイクルコンベンションでは最大級となるEICMA(エイクマ)で、2019年にハスクバーナ・モーターサイクルズ(以下、ハスクバーナ)が発表した1台のアドベンチャーバイクは大きな話題を呼びました。「NORDEN 901」(以下、ノーデン)がそれで、彼らにとって初めてアドベンチャーバイクであり、「NUDA 900」シリーズ以来、久々の並列2気筒モデルの登場となったからです。
2022年モデルとして日本にやってきたノーデンは、ミラノでアンベールされた時のスタイルそのままという雰囲気です。一体式シートがセパレートになったり、イエローグリーンに光っていたフォグライトが昼白色になっている程度しか見分けが付きません。
おそらくは細かくアップデイトされたに違いないデザインは、大きな丸目一灯のLEDヘッドライトやタンク、フェアリングやウインドスクリーンなど、面構成が醸し出すどこか懐かしいデザインです。ライダー、パッセンジャー、ラゲッジエリアの今風のスタイルの融合も見事。プレミアムさを打ち出しつつ、旅するバイクとしてのしっとり感すら覚えるのです。
現在、KTMグループの一員である「ハスクバーナ」ブランド。歴史をひもとけば、1980年代後半、イタリアのカジバグループにハスクバーナが吸収された時、地元スウェーデンに残ったエンジニア達が興したのが「フサベル」ブランドでした。1995年にはそのフサベルをKTMが吸収。独自性あるブランドとしてその後も存続します。ハスクバーナは2007年から2012年までBMWが保有し、2013年にKTMが吸収したワケですから、ハスクバーナは他人の手から親戚の元に戻った、とも言えるのです。
話を元に戻すと、このノーデンがKTMの「890アドベンチャー」と基本的な部分を共有するのもそうした理由によることろ。しかし、ダカールレーサーを思わせる「890アドベンチャー」に対し、ノーデンは明らかに旅風味濃厚な存在だと言えるでしょう。
クロモリ鋼を使った軽量高剛性フレームとストレスメンバーにもなる排気量889ccの並列2気筒エンジン。そのスペックもKTMの「890」シリーズと共通。足まわりにWP製APEXラインのφ43mmインナーチューブを持つ倒立フォークを使うのも同じです。そのストロークはフロント220mm、リア215mmと、「890アドベンチャー」と「890アドベンチャーR」の中間的なストローク量に設定。グランドクリアランスも、フロント21インチ、リア18インチタイヤ、クランクケース下がフラットな構成のエンジンとも相まって252mmと、しっかり取られています。
シート高は854mmです。足つき感をお伝えすると、スリムな車体で足を地面に下ろしやすく、悪いとは感じません(筆者の身長は183cm)。タンクまわりの幅がやや内ももを圧迫するのが気になる程度です。ライダーのシートは2段階に高さをアジャスト可能で、874mmの高い位置にセットすると、運動性の変化や長距離移動時のヒザの曲がりの低減、ダートロード走行時のシッティングとスタンディングポジションへの移行をよりスムーズに行なえるという選択肢がある、と捉えると良いでしょう。
短時間ながら走りを確かめました。並列2気筒エンジンはクランク位相角75度を与えることで不等間隔爆発を得た独特のリズムを刻みます。2本のバランサーを持ち、回転フィールはスムーズ。低い回転から滑らかにパワーとトルクを生み出します。ハンドリングの特性から急かされないのは、旅バイクとしては好印象。ガソリン満タン想定で218kg程度の車重だけに、このセグメントのバイクとしては重たくはありません。
シートの形状、フォームの乗り心地も素晴らしいものです。サスペンションは少し減衰圧を好みに調整したいところ。個人的には初期入力の部分をもう少しマイルドに動かし、さらにコンフォート方向を探ってみたい印象でした。
ワインディングではライダーが意図的に蛇を与えるような動きをしなければ、ゆったりとした旋回レスポンスを見せてくれます。もちろんタイトターンの連続、切り返しなどで素早く向きを変えたい時には、ライダーのアクションをしっかり受け止めてくれるスポーティさは標準装備。時間切れでワインディングでは試せなかったものの、シートハイトを高い位置に調整すると、ハンドリングレスポンスにもシャープさが増したので、キビキビ感を出したいライダーなら調整をお勧めします。
低速ダートでの動きも確認できました。いかなる道も旅の途上、とばかりにアップダウン、湿った土の上でもコントロールがしやすいのが特徴です。
ライディングモードをオフロードにすると、マイルドなアクセルレスポンスで後輪が滑り出す瞬間を捉えやすく、右手のコントロールとMTC(トラクションコントロール)の介入に併せ、アクセル操作を予測しやすいのも好感触。エクスプローラーモードでは9段階にトラクションコントロールの介入度を調整出来るものの、慣性計測をするIMUとの協調制御がどの程度ライダーとマッチしているか、というほど速度が出せないコースだったので、長距離での快適性、電子制御の併せ込みなどはまた別の機会に報告します。
最後に、標準で装着されるピレリ「スコーピオンラリーSTR」というタイヤについて。ウエットや低温時でもアスファルトでしっかりハンドリングとグリップ感を持っているタイヤで、ブロックパターンから見ての通り、ダート路での走りもサポートしてくれるマルチパーパスタイヤ(今回、ダート路では1.8 BARで走行)だけに、ノーデンに相応しいタイヤだと感じました。旅に恋するハスクバーナ、「ノーデン901」はそんなバイクでした。
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ハスクバーナ新型「ノーデン901」の価格(消費税10%込み)は174万5000円。生産国はオーストリアです。日本においては2022年3月より発売を開始しています。
提供:バイクのニュース
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Writer: 松井勉
1963年生まれ、オートバイ関係の取材、 執筆、プロモーション映像などを中心に活動を行う。海外のオフロードレースへの参戦や試乗テストによるインプレッション記事、取材リポートを多数経験。バイクの楽しさを日々伝え続けている。
スズキとヤマハくらいはオフロードバイクというカテゴリを残して欲しかったですね。老後に中型取ってOFFロード三昧したかったですが、どこもOFF車をやめちゃいましたから。
せめてトレイルバイクくらいは残してほしかったな。
いまのところ、それに近いのはハンターカブ(110cc)くらいですもんね。