「尿素水不足」 韓国に続き日本も深刻化? 経産省「増産」要請へ 価格高騰で「冷静な判断」を

日本と韓国で異なる尿素水不足事情

 前述の通り、韓国の尿素水不足は、元をたどれば米中関係に起因しています。

 アメリカが中国企業に対して輸出規制などの措置を取り、オーストラリアもそれに追随しました。

 中国も貿易規制でそれに対抗しますが、オーストラリアに対しては、石炭の買付を停止するなどの措置を取りました。

 中国にとっては、オーストラリアからの石炭輸入がストップしても、中国国内の採掘分で石炭の需要はまかなえる見込みでした。

 しかし、中国内陸部で発生した豪雨の影響などで、石炭の供給が大きく減少するという事態となります。

 そのため、火力発電の発電量も減少し、中国国内では電力不足が大きな問題となりました。

 一方、尿素水の元となるアンモニアの精製にも石炭が使用されることから、石炭不足がアンモニア不足を引き起こすことを予測した中国政府は、アンモニアの輸出制限を実施。

 韓国はアンモニア(尿素)のほとんどを中国からの輸入に頼っていたため、深刻な尿素水不足が起きてしまったのです。

 日本もアンモニアの一部を中国から輸入していますが、自国で生産している量も多く、また、東南アジア各国から安定して輸入することもできているため、基本的な調達構造が韓国とは大きく異なります。

アドブルーはトラックなどのディーゼル車で必要とするため、物流にも影響が出始めているという(画像はアドブルータンク)
アドブルーはトラックなどのディーゼル車で必要とするため、物流にも影響が出始めているという(画像はアドブルータンク)

 現実問題として、日本国内でもアドブルー不足が起きていることは事実ですが、その原因は構造的な問題というよりは、さまざまな不運が重なり、一時的に需要に対して供給が追いつかなくなったと見るのが妥当と考えられます。

※ ※ ※

 多くのディーゼル車のユーザーにとって、アドブルーは必需品であることは間違いありませんが、大量に買い占めなければならないほど必要となることはまずありません。

 しかし一方で運輸・運送、農業、建築の事業者などは、アドブルーを大量に必要とする可能性があります。

 そうした事業者たちにアドブルーが適切に供給されるよう、一般ユーザーはアドブルー不足の背景を理解し、冷静な対応を取ることが求められます。

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Writer: PeacockBlue K.K. 瓜生洋明

自動車系インターネット・メディア、大手IT企業、外資系出版社を経て、2017年にPeacock Blue K.K./株式会社ピーコックブルーを創業。グローバルな視点にもとづくビジネスコラムから人文科学の知識を活かしたオリジナルコラムまで、その守備範囲は多岐にわたる。

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