車の「燃費競争」はもう終焉? 実燃費「40キロ前後」の状況で頭打ちか 今後求められるモノとは

ガソリン車のカタログ燃費は30km/L程度で頭打ちになる理由

 ある自動車メーカーの技術者が「既存のガソリンエンジンがこれ以上大きく進化する余地は少ない」と漏らすように、乾いた雑巾をさらに絞るような努力で燃費を改善するよりも、それ以外の部分へと投資したほうが合理的という時代になりつつあります。

 もちろん、既存のガソリンエンジンも、徹底して研究を重ねれば、燃費性能が大きく改善する可能性はゼロではありません。

 しかし、同じ開発リソースを使うのであれば、EVを始めとする電動車のほうが技術改善の余地が多くあるほか、既存のガソリン車やハイブリッド車でも、デザインや安全装備への投資のほうがリターンは大きいという発想になっているのだと考えられます。

 各国政府の政策もあり、今後電動化が進むのはほとんど自明のこととなりつつあります。

トヨタが展開するEVブランド「bZシリーズ」となる「bZ4X」 今後は「燃費競争」から「電動化競争」に曲面が変わっている
トヨタが展開するEVブランド「bZシリーズ」となる「bZ4X」 今後は「燃費競争」から「電動化競争」に曲面が変わっている

 ガソリン車がある日突然消えることはないと思われますが、むしろガソリン車らしいフィーリングを売りにしたスポーツカーや、充電環境に乏しい場所でも走破できるようなタフなクロスカントリー車などへと集約されていき、現在のコンパクトカーや軽自動車が担っているポジションは、ほとんどEVに置き換わることが予測されます。

 そのような未来が訪れるのが少なくとも20年、30年後のことと思われますが、いずれにせよ、そうした未来が予測されるなかでは、燃費競争というのはほとんど意味をなしません。

 また、自動車メーカー自体がそこに投資する可能性も低いことから、既存のガソリン車については、飛躍的な燃費向上を見込むことは難しいのではないかと考えられます。

※ ※ ※

 今回述べたのは自動車メーカー側の視点が中心ですが、同様に、ユーザー側の視点も燃費重視から個性や使い勝手重視へと変化しつつあるといわれています。

 燃費が良いに越したことはない、というのはどのユーザーも考えることですが、単にコスト面のみを考えるのであれば、燃費は悪くても価格の安い中古車を選ぶという選択肢もあります。

 そのように考えると、燃費競争が落ち着いた背景には、新車を購入するユーザーのなかに、燃費が良いに越したことはないが、使い勝手やデザインなども重視したいと考えている人が増えてきているいえるのかもしれません。

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Writer: PeacockBlue K.K. 瓜生洋明

自動車系インターネット・メディア、大手IT企業、外資系出版社を経て、2017年にPeacock Blue K.K./株式会社ピーコックブルーを創業。グローバルな視点にもとづくビジネスコラムから人文科学の知識を活かしたオリジナルコラムまで、その守備範囲は多岐にわたる。

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