MT感覚で操れるパドルシフト なぜハンドルと一緒に回るタイプと回らないタイプがある?

ハンドルから手を離さずにシフト操作ができ、ATでもMT感覚でスポーツ走行が可能な「パドルシフト」。じつはパドルシフトには、ステアリング上に装着されてステアリングを回すと一緒に回るタイプと、コラムから伸びていてステアリングを回しても一緒に回らないタイプの2種類があります。そのメリット・デメリットはなんでしょうか。

日産「GT-R」は2017年モデルからステアリング側に変更された

 まず、ステアリング側に装着されているパドルシフトのメリットとデメリットはなんでしょうか。

日産「GT-R」。登場当初の2007年モデルのパドルシフトは、コラム側に装着されステアリングと一緒に回らない固定式タイプを採用していた
日産「GT-R」。登場当初の2007年モデルのパドルシフトは、コラム側に装着されステアリングと一緒に回らない固定式タイプを採用していた

 メリットは、パドル自体を小さくできることです。小ぶりでも操作性が悪くなりません。また、半回転以下のステアリング操作、つまりステアリングを持ち替える必要のないくらいのコーナーなら、コーナリング中でも楽に変速操作が可能です。これはサーキット走行などでは有効になります。

 では、デメリットはなにかといえば、半回転以上のステアリング操作をおこなってステアリングを持ち替えると、パドルの左右が分からなくなるということです。

 つまりその場合、パドルでのシフト操作ができなくなるという問題が生じます。ジムカーナなど、大きくステアリングを切り、頻繁に持ち替えなければならない場合には、シフト操作は難しくなります。

 一方、コラム側にパドルが装着されていれば、どれだけステアリングをグルグル回してもパドルの位置は動かないので、わかりやすくパドルでのシフト操作が可能です。

 ただしコラムからスイッチを伸ばすため、パドルのサイズはハンドル装着の場合よりも大振りになります。これはデメリットかもしれません。

 さらに、左コーナーのときは右手がステアリングの頂点以上に切り込むと(右コーナーのときは左手が頂点以上)、どんなにパドルシフトが大きくても変速操作はできません。つまり右手は常にステアリングの右半分の180度の範囲内、左手は左半分のなかにあることが前提となります。

 逆にいえば、いわゆる「送りハンドル」と呼ばれる操作方法ならば、いかなる場合でも変速ができるということです。このステアリング操作の場合、常に右手はステアリングの右半分、左手は左半分の位置にあるため、パドルの位置が動かないコラム側のパドルだと、どんな状況でも変速が可能になるのです。

 面白いのは、オープンホイールのフォーミュラのレーシングカーのほとんどが、ステアリング側のパドルシフトを採用しているのに対し、WRCなどのラリーカーはコラム側を採用すること。

 フォーミュラの場合、ステアリング操作の角度は小さいというのも、ステアリング側にパドルシフトを装着する理由となります。またドライバーが乗り降りするのにステアリングを外して、移動空間を作る必要があるため、パドルシフトが残っては邪魔になるというのも理由でしょう。

 逆にWRCなどのラリーカーは、ステアリングを常に大きくグルグルと回しています。そこでパドルシフトができないというのでは、導入する意味がなくなります。だからこそ、使うならコラム側のパドルシフトとなるのでしょう。

※ ※ ※

 では、量産車は、どうなのでしょうか。

 実際に採用されている車種を見てみると、どうやら日本車やドイツ車といった日本人にとって身近なクルマは、ステアリング側に装着する例が多いようです。ただし、三菱「ランサーエボリューションX」などはコラム側についていました。また日産「GT−R」は、登場当時コラム側に付いていましたが、2017年モデルからステアリング側にパドル位置を変更しています。

 また、イタリア車やフランス車は、多くがコラム側に付いているようです。

日本を代表するスーパーカー、ホンダ「NSX」のパドルシフトはステアリングに付き、ステアリング操作とともに回るタイプ
日本を代表するスーパーカー、ホンダ「NSX」のパドルシフトはステアリングに付き、ステアリング操作とともに回るタイプ

 しかし、考えてみれば、本来、量産車の場合はコラム側のパドルシフトのほうがメリットは多いと思います。

 たとえサーキットを走ろうとも、量産車であればヘアピンなどでは半回転以上のステアリング操作が必要となります。

 しかし、量産車に採用されているのはステアリング側のパドルシフトが多数派です。なぜでしょうか。

 推測するに、コスト的にステアリング側のほうが有利ということだと思います。また、最近のクルマは、ステアリングにオーディオやADAS系の操作系スイッチを集中させていることが多いため、それに合わせて、パドルシフトも同じステアリングに配置するということもあります。

 一方、実際にモータースポーツに利用するために、どうしてもコラム側にパドルシフトがないと困るというシーンは、それほど多いわけでもありません。公道のワインディングを走る程度であれば、どちらにパドルシフトが付いていても問題が発生することは現実にはないはずです。

 イメージ、操作系の統一、コスト。そういった理由や都合が重なったのが、現状のステアリング側の優勢という理由ではないでしょうか。

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