「ミウラ」のオーナーは19歳女子大生だった! 2億円オーバーで落札された「P400S」の数奇な運命とは

19歳女子大生がオーナーだったランボルギーニ「ミウラ」が、2億円オーバーで落札されました。イタリアから米国へ海を渡った数奇な運命のミウラのストーリーを紹介します。

フェラーリに代わるオークション市場の指標となった「ミウラ」とは

 2010年代中盤までの国際クラシックカー・マーケットにおいては、フェラーリの人気モデルが市場の推移を見定めるためのベンチマークとなってきた感がある。しかし近年では、一部のモデルをのぞくクラシック・フェラーリの相場価格が落ち着きをみせているせいか、代わってランボルギーニ、とくに「ミウラ」がマーケットの「潮位」を示す指標となっているようだ。

 毎年8月中旬、アメリカ・カリフォルニア州モントレー半島内の各地で展開されるカーマニアの祭典「モントレー・カー・ウィーク」が2021年に2年ぶりの開催となるのに際して、昨年はオンライン限定オークションでお茶を濁したRMサザビーズ社も、恒例の大規模オークション「Montley」をオンラインおよび対面型のミックスで開催。今回は平年以上のフェラーリが出品されることになったが、その一方で我々VAGUEが注目したのは、やはりランボルギーニ「ミウラ」である。

 このミウラ、ちょっと異様な風体と、なかなか数奇なストーリーを持つ1台であった。

現在はベアメタル状態で彫刻のようなミウラの姿となっている(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's
現在はベアメタル状態で彫刻のようなミウラの姿となっている(C)2021 Courtesy of RM Sotheby's

●過渡期に製造された、50台のみのミウラとは?

 VAGUE読者諸兄の間でも絶大な人気を誇るランボルギーニ・ミウラは、1966年秋の正式発表後、1973年まで生産された「元祖スーパーカー」である。

 しかし、もとより実験的な生い立ちを持つモデルであるがゆえに、そのモデルレンジ中には継続的なエンジニアリングの向上とアップグレードを受けることにより、パフォーマンスと市販車としての商品性を確たるものとしていったことでも知られている。

 デビュー2年後の1968年には、V12エンジンを350psから370psにスープアップするとともに、細部をブラッシュアップした「P400S」へと進化する。この「S」は「極端な」を意味するイタリア語「Spinto」の頭文字といわれる。

 そして1971年には、それまでのミウラ各モデルで指摘された問題点や、かのボブ・ウォレスが課外作業で製作したといわれる元祖「イオタ」で実験・改良されたメカニズムを盛り込んだ「P400SV」へと進化を果たした。

 P400SVでは、前後のカウルを大幅にリニューアル。フロントはラジエーターグリルの形状が少しだけ変更したほか、リアフェンダーはワイド化が施された。

 また「P400」およびP400S時代にミウラを象徴づけていたヘッドライト前後の「まつげ」が、ランボルギーニ社の開祖フェルッチオに収められたP400SVの個体以外は廃されたことから、アピアランスは大きく変わることになった。

 一方、ボディに隠れて表からは見えない改善点としては、それまでの反転Aアーム+トレーリングリンクに代えて、コンベンショナルなA型ロワーアームを備えた新設計のリアサスペンションが挙げられる。

 またV12エンジンについても、従来型ミウラでトラブルの発生源となっていたエンジン+トランスミッションの一括潤滑をやめ、それぞれ専用の潤滑システムを装備するなど、まさにミウラの最終進化形ともいえるだろう。

 しかし、クラシック志向の強い一部のランボルギーニ愛好家の間では、ナローフェンダー+まつげ付きヘッドライトのP400やP400Sを推す声もあるというのだが、実はそんなファンにとって極めて望ましいスペックの車両が、P400SからSVに移行する直前に50台だけ生産されていた。

 今回のオークションに出品されたP400S、シャシーNo.#4761は、その50台のなかの1台である。

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