デビューから丸3年 スズキ「ジムニー」がいまだに納車1年待ちの“なぜ?”

四角いデザインやボーダレス感がジムニー人気の理由

 それにしても、なぜジムニーはそこまで人気があるのでしょうか。

スズキ「ジムニー」のオフロードの走り。多くの部分において従来の弱点を解消しているという
スズキ「ジムニー」のオフロードの走り。多くの部分において従来の弱点を解消しているという

 それは車格を越えたボーダレスなイメージではないかと、あるジムニー業界の関係者はいいます。

「そもそもジムニーは、軽自動車というイメージが薄いんですよね。もちろんシエラにはオーバーフェンダーが付いていて、見た目の差別化は図られていますが、知らない人が見ると同じ車種だと思ってしまいます。

 最近は軽自動車も車格を越える豪華なモデルが多いですが、なかでもジムニーはボーダレス感が強いクルマ。白ナンバーを取得すれば、もはや軽自動車かどうかがわかりません。どのカテゴリーにも所属しない、ジムニーオリジナルという価値が魅力なんだと思いますね」

 もちろんアウトドアブームが裏打ちする道具感や、1990年代以降しばらく見なかったスクエアな四駆デザインも人気の要因になっています。50代以上のユーザーであれば、懐かしさを感じるボディデザインですが、若年層には他の国産車にはない雰囲気を備えた斬新なクルマに映ることでしょう。

 ジムニー用のオフロードタイヤで成功をおさめているタイヤメーカーのスタッフは、成功の要因を次のように語ります。

「やはり先代のJB23/43型とはまったく違う層のユーザーが、ジムニーオーナーの半数以上を占めたということだと思います。先代はやはり、悪路愛好家などコアな人々が多かったのですが、現行型はオフロードなんて走らないという人たちばかり。そういう普通のユーザーが“なんかジムニーっておもしろそう”“かわいい”と飛びついたことが、ジムニー人気に繋がっていることは間違いありません」

 もちろん、従来のジムニーファンも現行型の需要を底支えしています。悪路走破性という点では、先代よりも評価が低い部分もありますが、多くの部分において従来の弱点を解消しているからです。

 アフターパーツマーケットを見ても、ジムニー専門店がリフトアップサスペンションや悪路用のエクステリアパーツなどを豊富に流通させています。こういったパーツの多くが、従来からのジムニストのために用意されたといっても過言ではありません。

 一方で、ジムニーと無縁だったメーカーも、積極的に市場に商品を流通させています。たとえば、カーアクセサリー用品メーカーの星光産業は、早々にジムニー専用を謳ったラインナップを揃えました。発売当初は市場への不安もあったといいますが、ユーザー層がガラリと変わったことで大きな成功をおさめることになりました。納車前にアクセサリーを購入するユーザーが多いというのも、ジムニーに見られる独特の傾向だといいます。

スズキ「ジムニー」のインテリア。無骨な外観に対して室内のデザインは現代的だ
スズキ「ジムニー」のインテリア。無骨な外観に対して室内のデザインは現代的だ

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 車両もパーツも大人気のジムニーですが、シエラには数年以内にロングボディ車のデビューが控えているといいます。

 しかし現状のバックオーダーが解消されない限り、日本市場への導入は延期される可能性があります。一方で、「ロングボディが出たら買いたい」というユーザーも少なくありません。スズキとしては、早くバックオーダーを解消して、さらなるビジネスチャンスを広げたいところですが、それには半導体問題を解決する必要がありそうです。

 ちなみに、ジムニーシリーズは販売店でのキャンセルも月に数件は出るようですが、待っているユーザーからの引き合いですぐに行き先が決まるということでした。ショートボディをとりあえず注文するか、それともシエラロングのデビューを待つか、ユーザーにとって悩ましい日々はまだまだ続きそうです。

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【画像】登場から3年経っても人気のスズキ「ジムニー」をチェック(24枚)

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Writer: 山崎友貴

自動車雑誌編集長を経て、フリーの編集者に転向。登山やクライミングなどアウトドアが専らの趣味で、アウトドア雑誌「フィールダー(笠倉出版社刊)」にて現在も連載中。昨今は車中泊にもハマっており、SUVとアウトドアの楽しさを広く伝えている。

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