電動化加速でガソリンスタンドは無くなる? 多様化ニーズに合わせた生き残る術とは
この先のガソリンスタンド(サービスステーション)はどうなるのか?
このようなガソリンスタンドの多機能化は、今後も続いていくことと思われます。
実際に、石油元売最大手のエネオスでは、水素ステーションの設置から「エネオスでんき」の販売まで、石油にこだわらない次世代エネルギーを見据えた事業を展開しています。
ただ、水素ステーションへの転換といった大掛かりな事業改革には多額の初期投資が必要であり、大手の直営店ならまだしも、フランチャイズでガソリンスタンドを経営している地場の企業には簡単なことではありません。
また、どんな副次的なサービスを導入しようとも、過疎地域のようにそもそも人口が少ない場所では事業は成り立ちません。
実際に、閉店を余儀なくされるガソリンスタンドは、過疎地域にあるものが多いといわれています。
今後クルマの電動化が加速したとして、過疎化が進行している地域のガソリンスタンドは、いかなる業種でも事業継続は難しいと考えられます。つまり、早期に撤退するしかないかもしれません。
では、都市部や幹線道路沿いにあるガソリンスタンドはどのように変化していくのでしょうか。
ごく一部は、商用車や特殊用途車両向けのガソリン販売をおこなう場所として残る可能性はありますが、やはりそのほとんどが事業撤退せざるを得ないでしょう。
いくつかの「元ガソリンスタンド」は、EV充電ステーションや水素ステーションへの転換を図るかもしれません。
しかし、EVへの充電はガソリンスタンドのような場所である必要はなく、家庭での充電も可能であることを考えると、現在のガソリンスタンドほど、EV充電ステーションの需要があるとは考えにくそうです。
水素ステーションについても、ガソリンスタンドを置き換えるほどの需要はまだまだなさそうです。
筆者(PeacockBlue K.K. 瓜生洋明)は、都市部や幹線道路沿いのガソリンスタンドの多くが、まったく別の商業施設などへと転換すると予想しています。
現在、ガソリンスタンドの多くは、エネオスやコスモ石油といった大手石油元売会社の直営店ではなく、運営企業が別に存在するフランチャイズシステムを採用しています。
コンビニなどと同じ構造ですが、コンビニのように「脱サラ」をして個人ではじめるというよりは、コンビニよりも初期投資が必要な分、ある程度の体力のある企業が、ひとつの事業としてガソリンスタンドの運営もおこなっている例が多いというのが実情のようです。つまり、自動車メーカーとディーラーの関係に近いといえます。
そのため、収益性が悪くなれば、また別の新規事業へと転換をするという可能性が高いといえます。
例えば、都心部のガソリンスタンドであれば、新たにビルを建てたほうが収益化するという事例も出てくることでしょう。
実際に、都内のあるガソリンスタンドを運営する企業では、自動車用品店や飲食店の運営もおこなうなど、多角化経営を進めている例があります。
つまり、そうした運営企業にとっては、ガソリンスタンドの運営にこだわる必要はないのです。
このように、将来的にクルマの電動化が加速すれば、ガソリンスタンドの大部分が、廃業もしくは事業撤退となることでしょう。
ただ、電動化の時代になったとしても、愛車の点検や洗車といったメンテナンス、カスタムやドレスアップはおこなわれることは間違いありません。
時代の変化に対応できたごくわずかな「元ガソリンスタンド」が、そうした愛車のメンテナンスやドレスアップを行う拠点として、生き残っていくと考えられます。
それはつまり、多機能化した現在の「サービスステーション」から、ガソリンの販売を除いた姿なのかもしれません。
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クルマの電動化が叫ばれる昨今ですが、多くの人にとっていまいちピンと来ないのは、街に数多く存在するガソリンスタンドを毎日のように目にしているからかもしれません。
ガソリンスタンドの閉店や廃業は、地方ではすでに始まってます。
自動車の燃費向上以外にスタンドの貯蔵タンクの検査や維持、
年数を経るとタンクの交換に多額の費用が掛かるので、
それが賄えないから、閉店・廃業ということになるのです。
もとは、ガソリンスタンドで、ほかの用途に使われている建物は結構見られます。
そのために、ガソリン以外の農業用の軽油や家庭用の灯油が確保できなくなるという問題があり、
地域のJAや自治体が、新規に開業をしている場所もあります。
ガソリンスタンドは、単に普通の車のためだけに燃料を供給しているばかりだけではなく、
農業用機械の燃料や地域の家庭用の灯油の供給も行っていることを知ってもらいたいものです。