まさに衝撃的なデビュー! 世間をアッと言わせた車3選
非常に稀なことですが、新型車のなかにはエポックメイキングなクルマが存在します。それは性能であったり、メカニズムであったり、価格であったりとさまざまな要素でそれまでの常識を覆したようなモデルです。そこで、世間をアッといわせるほど衝撃的なデビューを飾ったクルマを、3車種ピックアップして紹介します。
衝撃的なデビューを飾ったクルマを振り返る
ガソリンエンジンを搭載した自動車が発明されてから、すでに120年以上が経ちます。これまで膨大な数のクルマが誕生しましたが、なかにはエポックメイキングなモデルも存在。
日本でも本格的な自動車製造は大正時代からおこなわれおり、やはり数多くの名車と呼ばれるクルマが誕生してきました。
そこで、世間をアッといわせるほど衝撃的なデビューを飾った国産車を、3車種ピックアップして紹介します。
●スズキ初代「アルト」
現在、日本の自動車市場でもっとも多く販売されているのが軽自動車です。
日本独自の規格として誕生した軽自動車ですが、1955年に登場したスズキ初の4輪自動車「スズライト」が、現在まで続く軽自動車の基礎を構築した最初のモデルといわれ、これまで軽自動車は規格の改定が続けられて進化してきました。
この長い歴史のある軽自動車において、革新的なモデルとして知られているのが、1979年にデビューしたスズキ初代「アルト」です。
当時、自動車には物品税が課せられていましたが、アルトは税法上で優遇されていた商用バンとして開発。実際は乗用に使われることを前提としていました。
さらにアルトは装備も極力簡素化しつつ徹底的なコスト削減をおこなうことで、47万円からという驚異的な低価格を実現しました。
外観も奇をてらうことなく加飾も最小限とした3ドアハッチバックのみで、まさに王道のベーシックカーです。
エンジンは既存の550cc直列3気筒2サイクル(1981年に4サイクルにスイッチ)をフロントに搭載するFFで、最高出力は28馬力(グロス)でしたが、わずか545kg(MXグレード)という車重には十分なパワーといえました。
初代アルトは日常の「足」として大ヒットを記録し、「軽ボンネットバン(軽ボンバン)」と呼ばれる新たなジャンルを確立。これに他社も追従したことから、1980年代は軽ボンバンが軽自動車市場を席巻したほどです。
なお、後に軽ボンバンのヒットを受け国は税制を改定して物品税が課せられるようになりますが、スズキは2シーター仕様のアルトを発売して物品税を回避し、47万円からという価格を維持しました。
●日産「R32型 スカイラインGT-R」
1957年に、プリンス自動車の前身である富士精密工業から発売された「スカイライン」は、すでに64年もの歴史を刻んでいるモデルです。
初代から先進的な技術を採用しており、このコンセプトは脈々と受け継がれていました。
そして、まさに「技術の日産」の集大成といえるのが、1989年に8代目スカイラインをベースにした高性能モデルの「スカイラインGT-R」(R32型)です。
1969年に登場した初代と同じく、市販車をベースにしたレースで勝つことを目的に開発されました。
ボディは2ドアクーペのみとされ、エンジンは専用に開発された2.6リッター直列6気筒ツインターボ「RB26DETT型」を搭載。最高出力は当時すでに自主規制上限だった280馬力を発揮しました。
また、駆動方式はFRを基本とする駆動トルク可変型のフルタイム4WDシステム「アテーサE-TS」を採用し、新開発の4輪マルチリンク式サスペンションと相まって高い運動性能を実現します。
ツインターボエンジンやフルタイム4WDといったメカニズム自体は目新しいものではありませんでしたが、レースで圧倒的なパフォーマンスを発揮することを目的に、日産がここまでやりきったことは驚異的なことでした。
スカイラインGT-Rは1990年シーズンから「全日本ツーリングカー選手権」に参戦しましたが、デビューから圧倒的な強さを見せつけ以降は無双状態になり、1993年にレースが消滅するまで26戦全勝を記録しました。
●トヨタ初代「プリウス」
現在、世界中で普及しているハイブリッド車ですが、もともと「ハイブリッド」という言葉は生物学などで使われていたもので、クルマの場合はエンジンとモーターといった異なるパワーユニットを同時に搭載している場合の総称になります。
エンジンとモーターを搭載したハイブリッド車の歴史は古く、自動車が発明された直後の19世紀には作られていました。
1980年代以降は、低燃費化の切り札として世界中のメーカーがハイブリッド車の試作を繰り返しましたが、安定した性能の電池と希土類を使ったモーターのコストや、重量増や制御技術の難しさにより量産化まで到達できませんでした。
しかし、トヨタが量産車初のハイブリッド車の開発に成功し、1997年に初代「プリウス」を発売します。「21世紀に間に合いました」というキャッチコピーが大いに話題となりました。
プリウスの開発目標は、同クラスのガソリン車と比べて2倍の燃費性能で、当時としては驚異的な28km/L(10・15モード)という低燃費を実現。実際に従来のガソリンエンジン搭載のAT車に比べ約2倍の燃費性能であり、CO2の排出量を約2分の1に削減することができたことになります。
パワーユニットは最高出力58馬力の1.5リッター直列4気筒ミラーサイクルエンジンと、41馬力のモーター、さらにエンジンとモーターの駆動配分や、発電を制御する動力分割機構を組み合わせた「THS(トヨタ・ハイブリッド・システム)」を搭載。
バッテリーは安定性や信頼性、コストを重視してニッケル水素電池を採用していました。
価格は215万円(消費税含まず)と、同クラスのクルマよりも数十万円ほど高価で、発売直後はこの高価格のため年間販売台数は2万台ほどにとどまりました。
これは当時の「カローラ」の10分の1にも満たない台数でしたが、年を追うごとに販売台数は増加傾向にあり、その後2代目、3代目と爆発的なヒットを記録したのは記憶に新しいところです。
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初代プリウスが登場して2021年12月で丸24年が経とうとしています。この間に燃費は28km/L(10・15モード)から32.1km/L(WLTCモード)に向上していますが、モードの違いと、さらに現行モデルは初代から車重が100kgほど重くなっていていることも考慮すると、驚異的な進化といえそうです。
一方、ハイブリッドシステムも改良が重ねられているとはいえ基本的な構造は初代から変わっておらず、いかに初代が考え抜かれて開発されていたことがうかがえます。
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