待望のフルモデルチェンジ! でも「見た目はそのまま?」 なぜ変わらぬ全面刷新増えた?
かつてフルモデルチェンジといえば、内外装をガラッと変えるのが定番でした。しかし、最近ではフルモデルチェンジでも見た目は先代モデルとあまり変わりがないこともあります。そこにはどのような理由が考えられるのでしょうか。
フルモデルチェンジはユーザーにとっても悲喜こもごも
数年に一度おこなわれるフルモデルチェンジでは、文字通り骨組みから大きく変わるため、見た目にも大きな変化が見られるものでした。
しかし、近年のいくつかのクルマでは、フルモデルチェンジにもかかわらずに見た目があまり変わらないクルマが増えています。
そこにはどのような理由が考えられるのでしょうか。
クルマはほとんどの場合、6年程度のサイクルでフルモデルチェンジがおこなわれます。
基本的には、国土交通省に届け出をしている型式認定番号を変更することをフルモデルチェンジと呼び、型式認定番号を変更しないモデルチェンジを、マイナーチェンジや年次改良などと呼びます。
フルモデルチェンジでは、基本的にエンジンやプラットフォームも一新されるので、名前は同じでも、クルマとしては大きく変わるのが一般的です。当然、内外装のデザインも一新され、見た目も大きく変わります。
フルモデルチェンジはファンや業界にとってもひとつの「お祭り」であり、その見た目やスペックがどう変わったのかに対して、賛否両論さまざまな意見が飛び交います。
しかし、近年ではホンダ「N-ONE」やスバル「レヴォーグ」、スズキ「ハスラー」など、フルモデルチェンジを果たしたにもかかわらず、見た目がそれほど変わらないクルマも見られるようになりました。
もちろん、注意して見ればその変化に気づくことはできますが、クルマにあまり関心のない人であれば、どちらが新型でどちらが旧型かをすぐに見抜くのは難しいかもしれません。
フルモデルチェンジでも見た目が変わらない理由については、個々の車種ごとに事情やねらいがあることでしょう。
例えば、旧型のデザインの評価が非常に高く、ライバルの少ない「オンリーワン」の存在であれば、キープコンセプトのデザインは妥当といえます。
しかし、筆者(Peacock Blue K.K.瓜生)は、今後このような事例、つまりフルモデルチェンジでも見た目が大きく変わらないという事例が増えていくと予想しています。
前述のとおり、個々の車種に関していえば、それぞれの事情や狙いがあるといえます。
一方、自動車業界全体の傾向として、デザインを大きく変えることが難しくなっていると筆者は考えます。
そのひとつ目の理由は、開発コストの問題です。2010年代以降、運転支援システムなどに代表される電子デバイスの搭載が進むなどクルマが高機能化したことにともない、車両の開発・製造コストは上昇し続けています。
一方で、競争力のある価格帯とするために、自動車メーカーもまた、プラットフォームを共有化したり、新素材を活用したりするなどの、可能な限りのコスト削減をおこなっており、その一環として、デザインのキープコンセプト化が進んでいるのだと思われます。
もちろん、旧型のデザインを単純に使い回すという意味ではありません。ただ、キープコンセプトのデザインとすることで、開発や確認に伴う工数を削減し、結果としてコストの削減につながるのです。
また、デザインや開発時に用いるシミュレーターの精度向上も一因と考えられます。
かつては、デザインを起こしたあとにクレイモデルを製作し、空力性能や強度の確認をおこなっていました。
しかし、現在ではシミュレーターによる高度な演算処理によって、空力性能や強度の確認がおこなえるようになったことで、開発コストは大きく削減された一方で、デザインが似通うという問題が生じることになります。
つまり、シミュレーターによって最適なものとして導き出されるデザインは、物理学上の計算に基づいた合理的なものであり、理論上はどのメーカーでも同じデザインとなります。簡単にいえば、空力性能を追求すれば可能な限り流線型になってしまうのです。
もちろん、そこから差別化を図るのがデザイナーの腕前ともいえますが、物理学上の「答え」が出ている以上、全体のボディラインは大きく変えづらいのだと考えられます。
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以前にトヨタ「クラウン」や日産「スカイライン」がSUV化するかもしれないという報道があり、世間を賑わせるということがありました。
この報道の真偽はともかく、時代の流れを見ると、いずれ大きく見た目を、あるいはそもそものパッケージングを変えるクルマも出てくることでしょう。
時代ごとのニーズに合わせて適切に変化することは、生き抜くために必要不可欠なことです。しかし、表面的な意味で変わることが正しいわけではありません。
あえて変える必要のないクルマこそ、優れたデザインといえるのではないでしょうか。
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