世界記録「1040.5km」達成! トヨタ「ミライ」の無充填記録を大幅に更新! みんなの「たすき」が繋がった結果はいかに
トヨタが販売する燃料電池車の新型「ミライ」。フランスのトヨタチームは2021年5月に満充電走行距離の無充填世界記録となる1003kmを達成しています。今回、国沢光宏氏率いるチームは福島から東京というルートでチャレンジした結果、世界記録「1040.5km」を達成しました。
新型「ミライ」で満充填航続距離の世界記録を達成へ
2021年5月26日に、フランスのトヨタチームが新型「ミライ」を使って燃料電池車の満充電走行距離の無充填世界記録となる1003kmを達成した。
今回、その記録を破るべく筆者(国沢光宏)が率いるチームを結成。スタート地点は、水素を次世代のエネルギーとして一生懸命取り組んでいる福島県のいわき市にある水素スタンドから東京都内を目指した。
そして、何とか燃料電池車の満充填航続距離の世界記録を更新できました。
もう少し詳しく書くと、世界記録を達成した1003km時点でも走行可能距離は100km程度残っている計算。
ギリギリまで水素を使い、同じ記録のチャレンジを受けた際のマージンを取ろうかと思いましたが、事前に警察へこの件で相談した際「燃料切れだけは御注意ください」。
ということで十分な余力を残しつつ首都高速の都心環状線C1を離れ、ゴール地点として設定していた豊洲の水素ステーションに到着した時点での距離が1040.5kmということになりました(首都高の都心環状線の連続走行は順法走行なら問題無しという返事を貰っています)。
どうせなら水素ステーションの回りを走り記録を攻めたらよかったか。
全体の状況について説明すると、スタートしたいわき市の水素ステーションから、茨城県の大洗までは基本的に国道6号線。
そこから太平洋に沿った道で千葉県の銚子。さらに九十九里を走り房総半島をグルリと回り、木更津からアクアラインで東京へ。基本的に一般道を450kmというイメージ。この間、帰宅時間の渋滞や信号も多数ありました。
フランスチームが1003kmを達成したコース、グーグルのストリートビューでチェックしてみたら、基本的に交通量の少ない一般道。
しかも信号じゃなくロータリー交差点が大半のため、止まらずに走れる感じ。我が国の昼から夜に掛けての一般道はなかなか厳しい交通環境です。そういった意味でも日本の優位性無し。
そこから首都高の都心環状線を走る作戦。都心環状線は信号無く、制限速度40km/hと50km/h。
交通量の少ない時間帯ならフランスチームと同じような走行条件を作れます。
ただ朝になると交通量が増え、自分のペースで走れなくなってくるのが大きな課題。ここはもうクルマの燃費性能と、ドライバーの技量に任せるしかない。
という作戦だったのだけれど、大きく足を引っ張られたのが予想を超える大雨。多少の雨は覚悟していたものの、降り始めたら強い風を伴い水たまりが出来るほど。
少しの雨だったら窓ガラスの曇りくらいの問題しか出ないけれど、水溜まりができるとタイヤの転がり抵抗が大きく増える。フランスチームも雨に遭遇し、大苦戦したと聞いていました。
私達も雨によって2人連続して積算燃費を落としてしまう。参考までに書いておくと、積算燃費で190km/kgを超えれば記録達成が見えてくるという状況。
3人目終わった時点で204km/kgだったのが、200km/kg、196km/kgと落ちていく。
しかも雨は止まず。あと2人4km/kgずつ落としたら記録達成は難しくなってしまう。
ところがであります。深夜から早朝という路面の確認をしにくかった条件の3人、素晴らしい仕事をしてくれました。
雨が上がり状況よくなるまで196km/kgをキープした「たすき」を繋いでくれたのだった。
3人とも乗る前はポーカーフェイスだったのだけれど、スタートするや超真剣モード。動画を見ていると背中で気合いを感じるほど。
厳しい雨のなかで落ち幅を最大限に抑えた2人と、持ちこたえた3人で記録更新が見えてきました。
9人目は2輪業界じゃアクセルコントロールの神様といわれている柏さんなので「自分の得意分野で走ってください」とアドバイスしただけなのに、初めてハンドル握った燃料電池車ながら、800km走って積算燃費を上げた。
そして最終ドライバーは文頭の通り絶好調。個人的にはあと2周(約30km)くらい走ってもなんら問題無かったと思っている。
というのもゴール地点で水素を入れたら5.21kg。30km走ろうとしたら0.15kg。
新型ミライのタンクは5.6kgのため、余裕だったと思う。こう書いておけば、この記録にチャレンジする人を牽制出来るかも。
Writer: 国沢光宏
Yahooで検索すると最初に出てくる自動車評論家。新車レポートから上手な維持管理の方法まで、自動車関連を全てカバー。ベストカー、カートップ、エンジンなど自動車雑誌への寄稿や、ネットメディアを中心に活動をしている。2010年タイ国ラリー選手権シリーズチャンピオン。
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