半世紀前に斬新なキャンピング仕様があった? 変わり種仕様の車3選
一般的にクルマには複数のグレードが設定され、かつては1車種で複数のボディタイプがラインナップされることも珍しくありませんでした。そこで、変わり種のボディのモデルを3車種ピックアップして紹介します。
一風変わったボディやグレードをラインナップしたモデルを振り返る
昭和の時代には1車種で数多くのボディタイプをラインナップするのが一般的でした。
たとえばトヨタ「クラウン」の現行モデルは4ドアセダンのみですが、かつてはセダンに加え、2ドアクーペやステーションワゴン、ライトバンなどが設定されていた世代もあります。
また、グレードも今より豊富に設定していた車種もあり、あらゆるニーズに対応していたといえるでしょう。
そこで、今では見られないようなユニークなボディ、グレードのモデルを3車種ピックアップして紹介します。
●日産「スカイライン ハッチバック」
日産の現行ラインナップのなかで、途切れることなく長い歴史を刻んでいるモデルといえば「スカイライン」です。
最新モデルは4ドアセダンのみですが、かつては2ドアクーペがあり、さらにステーションワゴンやライトバン、4気筒エンジン車など、数多くのボディタイプやグレードを展開していました。
なかでもユニークなモデルだったのが、1981年に登場した6代目(R30型)に設定されたスカイライン ハッチバックです。
文字どおりボディは5ドアハッチバックで、4気筒DOHCエンジンを搭載した「RS」グレード以外のモデルにラインナップされ、リアシート部分までは4ドアセダンとドアも共通でしたが、トランク部分はルーフエンドからテールエンドに向かってなだらかに傾斜するリアゲートにつくり変えられていました。
全体のフォルムは見慣れていた2ドアハードトップやセダンと大きく異なり、当時は違和感を覚えた人も多かったのではないでしょうか。
4ドアセダンの運動性能とステーションワゴンに匹敵する使い勝手の良さを合わせ持ったモデルでしたが、当時の日本では、5ドアハッチバックは売れないというジンクスがあり、スカイライン ハッチバックも販売は好調とはいえず、次世代の7代目では廃止されてステーションワゴンが復活しました。
スカイライン ハッチバックはシリーズのなかでもかなり異端な存在で、現在では現存数も少なく激レアモデルです。
●ホンダ「シティ ハイルーフ」
2021年6月にホンダのコンパクトカー「フィット」は、誕生から20周年を迎えました。このフィットのルーツとなるモデルというと、1981年に発売された初代「シティ」ではないでしょうか。
シティはそれまでのコンパクトカーの常識を覆す高い全高と、短いフロントノーズ、台形フォルムの外観デザインを採用して広い室内を実現。
背が高いフォルムも機能美と捉えられてユーザーから絶大な支持を受け、大ヒットを記録しました。
ラインナップも豊富で、当初は標準的なモデルとライトバンの「シティ プロ」だけでしたが、後に高性能モデルの「シティ ターボ」と「シティ ターボII」、燃費に特化した仕様や副変速機付きの「ハイパーシフト」仕様、イタリアの老舗カロッツェリアであるピニンファリーナと共同開発したオープンカーの「シティ カブリオレ」などが登場。
そして、1982年には全高が高いシティをさらにハイルーフとした「シティ ハイルーフ」を追加ラインナップしました。
一般的にハイルーフというとワンボックスバンに設定され、室内高を高くすることで荷物の積載性向上が図られますが、シティ ハイルーフの場合もヘッドクリアランスが増えて居住性が高められました。
しかし、それだけではなく、かさ上げされた内装のルーフ部分に4スピーカーのボードを設置した「マンハッタンサウンド」仕様を設定。
スピーカーボードは可動式で、リアゲートを開ければ車外にスピーカーを向けることができ、アウトドアでもディスコのような楽しみ方ができると提案されました。
初代シティは誕生した時点で斬新なクルマでしたが、次々と追加されるモデルもどれもが注目されるなど、トピックス満載のクルマだったといえます。
●三菱「デリカ キャンピングバン」
三菱の現行モデルで売れ筋となっているのが、ミドルクラスミニバンの「デリカD:5」です。
デリカD:5はミニバンでは唯一無二の本格的なオフロード走行が可能なモデルであり、アウトドア派のファミリー層から高い支持を得ています。
このデリカシリーズは50年以上もの歴史があり、初代はキャブオーバータイプのトラック「デリカ」として1968年に誕生。
その翌年の1969年にはワンボックスバンの「ライトバン」、「ルートバン」および「コーチ(乗用9人乗り)」を追加。なかでもコーチは、後の「スターワゴン」や「スペースギア」、現行モデルのD:5へと続く三菱製ワンボックスワゴンのルーツといえます。
1971年にはエンジンのグレードアップに合せて車名を「デリカ75」に改め、さらに当時の余暇に対する意識の高まりに合わせて、1972年にルーフゲート開閉式の「デリカ キャンピングバン」を発売しました。
ルーフはいわゆるポップアップ式で2名が横になって寝られる空間があり、室内もベッドとすることが可能で、オプションで車外用タープや、室内の後部にはギャレー(キッチン)も設置できるなど、本格的なキャンピングカー仕様となっていました。
今から半世紀も前にメーカー純正のキャンピング仕様を設定するなど、後のデリカのコンセプトであるアウトドア志向を予感していたかのようです。
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冒頭の繰り返しになりますが、昭和の時代のクルマでは数多くのボディタイプを設定するのが一般的でした。
今では考えられませんが、セダンに4ドアと2ドアを設定するモデルもあったほどで、それだけニーズがあったということでしょう。
現在はニーズの変化や生産の合理化も進み、それぞれのボディタイプは独立した車種へと変わったり、統廃合されてシンプルなラインナップとなっています。
CITYのハイルーフはマンハッタンルーフと名乗っていたように記憶してました。