いま買い時か!? 「DB7」で始めるアストンマーティンライフに待っているものとは?

「DB7ヴァンテージ」は、いま買いどきなのか!?

 ボナムズ「MPH September Auction」に出品された、もう1台のアストンマーティンDB7ヴァンテージは、2+2コンバーチブルの「ヴォランテ」である。

●2002 アストンマーティン「DB7ヴァンテージ・ヴォランテ」

腐ってもアストンマーティン。これほどまでに使い込まれても値段がつくというのは、さすがアストンマーティンだ(C)Bonhams 2001-2020
腐ってもアストンマーティン。これほどまでに使い込まれても値段がつくというのは、さすがアストンマーティンだ(C)Bonhams 2001-2020

 アストンでは「DB6」時代初期に「DB5ドロップヘッド・クーペ」をベースにDB6のディテールを与え、わずか37台が製作された「アストンマーティン・ヴォランテ(通称ショートシャシ・ヴォランテ)」以来、コンバーチブル版をヴォランテと呼ぶようになり、DB7シリーズでもその慣習が踏襲されていた。

 今回の出品車であるDB7ヴァンテージ・ヴォランテに対して、ボナムズ社は1万6000−2万ポンド、日本円に換算すれば約210万円−270万円という、ちょっと驚いてしまうほどに控えめなエスティメートを設定していた。

 クラシックカービジネスの世界では「ドアの数は少ないほうがいい。できればルーフは無いほうがいい」などとしばしばいわれるのだが、こと今回の出品車については同じオークションに出品されたDB7ヴァンテージ・サルーンよりも、大幅に安価な設定とされていたのだ。

 しかし、ボナムズ社が作成したオークションWEBカタログに正直に記された「In need of some re-freshing(リフレッシュが必要)」の一文を見れば、安価なエスティメートの理由が判ってくるだろう。

 現状での走行距離は約5万7000マイル、約9万7000kmとけっこう伸びてはいるものの、18年落ちであることやヨーロッパでのクルマの使用環境を思えば、一概に「過走行」とは言えないレベルである。

 また、WEBカタログによると、エンジンや5速ATなどの機関部について「has been serviced and is now running and driving well.(メンテナンスを受け、良く走る状態にある)」と記されているなど、メカニカルコンディションは完調と思われる。

 それでもエスティメートが低く見積もられてしまったのは、エクステリア/インテリアともに、かなり難アリのコンディションが最大の要因であろう。

 エンジンフードはクリア塗装が一部剥げた状態で、アイヴォリーの本革シートにもかなりの使用感。正直なところ「リフレッシュ」というよりは「レストア」が必要であるかにも見える。

 この内外装コンディションがシビアに評価されたのか、9月20日におこなわれた競売ではリザーヴ(最低落札価格)に届かなかったようで、残念ながらDB7ヴァンテージ・サルーンと同じく流札。現在でも、ボナムズ社営業部門によって継続販売となっている。

* * *

 さて、ここまでは遠い海外での話なのだが、DB7ヴァンテージ/ヴァンテージ・ヴォランテについては、日本国内のマーケットでもまれに売り物が出ることもあり得る。

 そして、もしも貴方がアストンマーティンに憧れ、DB7ヴァンテージを手にしたいと切望しているならば、筆者は心からのエールを贈りたいと思う。

 確かに、「DB9」および初代「V8ヴァンテージ」以降のアストンに比べると、トラブルの可能性がかなり大きくなってしまうことは否定できない。

 しかし双方のDB7ヴァンテージともに、現代のアストンマーティンにはもはや望むことのできない、豪放磊落(ごうほうらいらく)なフィールが存分に味わえる、旧き良き自然吸気V12エンジンがこのプライスで味わえるというのは、なかなかリーズナブルとも感じられてしまう。

 こと趣味の領域で「コスパ」なんて観念を持ち出すのは野暮と言い切ってしまえる豪快な英国車エンスージャストには、労苦と出費に見合うだけの幸福感が待っていると信じたいのである。

【画像】「DB7」を選ぶならクーペ? それともオープン?(19枚)

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