なぜ軽は64馬力規制を継続? 普通車は16年前に撤廃も 規制故に出来る事とは

普通車の馬力規制は撤廃も、軽自動車はいまも64馬力が上限?

 軽自動車の64馬力規制の第1号となったのは、1987年に発売されたスズキ「アルトワークス」といわれており、アルトワークスは550ccという低排気量エンジンながら64馬力を達成しました。

 そして、それ以降ほぼすべての軽自動車が64馬力を最高出力としており、2020年現在も原則として64馬力を最高出力として販売されています。なぜ、軽自動車ではいまなお自主規制がおこなわれているのでしょうか。

 64馬力規制について、自動車業界関係者は次のように話します。

「軽自動車の最高出力がいまなお64馬力であるのは、単純にニーズがないということが原因だと思います。

 いまはかつてほど、馬力をアピールするだけでクルマが売れる時代ではありません。とくに軽自動車の購入者層ならなおさらで、馬力には興味がない人がほとんどです。

 また、エンジン技術や車体の軽量化も進んだことから、64馬力でも日常の足として十分に機能しますし、坂道でも登れないということはありません。

 加えて、近年では軽自動車の高価格化も進んでいることから、より動力性能が必要な人は、軽自動車と同じ予算でコンパクトカー(普通小型車)を購入するという選択肢があります。

 技術的には、660ccの排気量で100馬力程度のパワーを出すことは不可能ではないでしょう。しかし、クルマの性能は最高出力が高ければ高いほどよいというものではありません。

 軽自動車の規格を守ったうえで、なおかつ消費者が求めるクルマというと、64馬力で十分ということだと思われます」

「64馬力規制」のきっかけとなったスズキ「アルトワークス」
「64馬力規制」のきっかけとなったスズキ「アルトワークス」

 そもそも軽自動車は「全長3400mm以下/全幅1480mm以下/全高2000mm以下/排気量660cc以下」のクルマをおもに税制面で優遇するという、日本独自の規格です。

 最高出力はあくまで自主規制であるため、国が定める軽自動車の規格には明記されていません。

 軽自動車メーカー各社は、当然この規格に合わせるようにクルマを設計します。

 とくに、最大限スペースを活用するために、ほとんどのクルマで全長と全幅は最大値ギリギリとなっています。

 もし、仮に100馬力のエンジンを搭載した場合、ボディ剛性を高めるためにより肉厚にする必要があますが、全幅や全長はすでに目一杯広げているので、居住スペースを削ることになります。

 その結果、居住性が悪く、なおかつ車重は増加し燃費も悪いという軽自動車が出来上がってしまいます。

 ボディサイズを拡大したりすれば、それはもはや軽自動車ではなくなってしまうため、軽自動車の最高出力を上げることは、軽自動車の存在価値を失うことでもあるといえそうです。

※ ※ ※

 軽自動車は日本独自の規格ではありますが、その厳しい規制のなかで燃費性能や居住性能を高めたり、ライバルと差別化するデザインをしたりという点で非常に優れているため、海外の自動車メーカーの開発者やエンジニアたちが参考にしているといいます。

 軽自動車の64馬力という自主規制は、軽自動車を縛るためのものではなく、軽自動車が進化するなかで導き出されたひとつの到達点なのかもしれません。

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Writer: Peacock Blue K.K.

東京・渋谷を拠点とするオンライン・ニュース・エージェンシー。インターネット・ユーザーの興味関心をひくライトな記事を中心に、独自の取材ネットワークを活用した新車スクープ記事、ビジネスコラム、海外現地取材記事など、年間約5000本のコンテンツを配信中。2017年創業。

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